美しいフォルムと情熱的な音色がカッコいい楽器、サックス。自由自在に弾きこなしたいと、憧れる方は多いでしょう。

そうなれば、さっそく練習です。ただ、時間的・地理的な制約により、レッスンを受けるのが難しいことも少なくありません。その場合には独学となるわけですが「独学でも上達できるのかな」「どんな練習をすればいいのかな」といった疑問が付きまといますよね。

そこで本記事では、サックス初心者が独学で上達するための方法やコツなどを、現役の講師が解説していきます。ポイントを押さえれば、サックスは誰でも上達できます。勇気を出して一歩踏み出し、音楽ライフを楽しみましょう!

案内人

  • 門田瑞紀中学校からサックスを始める。現在は、フリーのサックス奏者としてソロや室内楽で精力的に活動しながら、中学校や高校で後進の指導にもあたる。六甲道ミュージックスクールサックス講師。大阪音音楽大学演奏員。

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サックス初心者の独学は難しい?

そもそも独学でサックスを吹けるようになるのか、心配な方も多いでしょう。

この点については心配ありません。楽器経験がまったくなくても、独学での上達は十分に可能です。

書店には教則本があるだけでなく、最近ではブログやYouTubeで無料の教材が手に入ります。基礎中の基礎から丁寧に教えてくれているので、まずはネットで調べてみて、自分にとって分かりやすいと思った方法から試すのがよいでしょう。

始める年齢に早いも遅いもない!

「歳をとってからでも大丈夫かな……」と心配な方、問題ありません。

サックスは、トランペットやフルートといった他の管楽器より誕生が新しく、楽器を作る技術が発展した時代にできました。なので、音を鳴らすこと自体は、管楽器の中でも簡単な方なんです。

そして、出せる音域が他の楽器に比べ狭いため、覚える運指も少なく済みます。

こうした特性により、年齢を重ねてから楽器を始めるなら、むしろサックスがおすすめといえるのです。はじめる時期に早い遅いは関係ありません。やってみたいと思ったなら、どんどんチャレンジしてみましょう!

初心者の独学サックス練習方法とコツ

上達には地道な基礎練習が欠かせません。つまらないかもしれませんが、はじめのうちは基礎練習と曲練習が8:2ぐらいの割合になるよう調整しましょう。

以下におすすめのメニューを3つ紹介しますね。

ロングトーン

ロングトーンは1つの音を長く出し続けることで、練習における基礎中の基礎です。

最初は音を出すだけでも苦労するかも知れませんが、その原因として、息が一定の量と間隔で楽器へ入っていないことが考えられます。この問題を解消し、安定的なブレスコントロールを目指すために、息を吐き続ける練習をしましょう。

ただ吹き続けるだけでなく、音をまっすぐ伸ばせているか、音程を一定に保てているか、綺麗な音を出せているかをチェックしてみてください。遠くへ直線的に息を飛ばすイメージで、8秒間は吹き続けられるようになるのが目標です。

音階練習

ロングトーンとあわせて、指を動かして音階をなぞる練習もしましょう。この練習では、メトロノーム通りの正確なリズムで吹くことが大切です。

速く吹く必要はありません。指が追いつくテンポではじめ、慣れてきたら徐々に速くしつつ、ドレミ以外の音階にも挑戦していきましょう。

練習曲

上2つの練習は正直単調なため、どうしても飽きてしまうものです。なので、ある程度は音を出せるようになったら曲に挑戦してみましょう。

「キラキラ星」や「チューリップ」といった童謡がおすすめです。同じメロディーを繰り返す曲が多いので、比較的簡単に吹けます。まずは、曲を吹く楽しさを実感してください。

メトロノームとチューナーは必須!

練習のときに必ず用意してほしいのが、メトロノームとチューナーです。

メトロノームは、テンポを確認したりリズム感を鍛えたりするのに必須の道具。チューナーは、楽器の音を正しい高さで鳴らすのに欠かせません。

スマホアプリも多数リリースされているので、最初はそれを使うのもよいでしょう。

初心者が独学でサックスを継続するポイント

独学というのは進捗を確認しにくく、相談相手がいないこともあって、継続するのが難しいものです。では、どうすればモチベーションを維持しながら続けられるのか?3つのポイントを紹介します。

長時間吹かない

練習を長時間続けると、唇が痛くなったりサックスの重さで肩が凝ったりして、練習意欲が下がってしまいます。

唇が痛くなったら、その部分を避けるようなマウスピースのくわえ方をして頑張る方もいますが、間違った口の形で吹き続けても上達はしません。また、肩が凝ると楽な姿勢になろうとして、正しいフォームを崩してしまう可能性があります。

慣れると長時間吹き続けられるようになりますが、最初はすぐ疲れます。休憩も挟みながら、体に負担がかからないよう短期集中で練習しましょう。

自分の演奏を録音して聞いてみる

1人で練習していると、どこが悪いのか分からず、改善点も見えてこない……ということが起こりがちです。特に初心者の場合、音を出すことに集中するあまり、自分の音を聞けていないケースが多くあります。

自分の演奏を客観的にとらえるために、スマホの録音機能で十分なので、一度レコーディングしてみましょう。教材と比較できるとなお良しです。

悪い点が分かりますし、逆に良い点も見つかってモチベーションを上げる効果もありますよ。

目標を決める

目標があると、モチベーションを維持しやすくなります。

「3ヶ月後に○○の曲を吹けるようになる」「1年以内にアドリブも入れられるようになる」など、簡単すぎず難しすぎず、頑張れば達成できるレベルの目標を期限付きで立てましょう。

目標が分からない場合、YouTubeでプロの演奏を聴いてみてください。サックスは吹き方によって音色を変えられ、さまざまなジャンルに対応できます。プロの演奏を通じて、自分はどんな音色が好きなのか、どんなジャンルの曲が好きなのかを知れば、目標を作るきっかけになるかもしれません。

サックス独学者におすすめの教材

独学するにあたって重要になるのが教材です。音楽教室の先生のような存在になるので、信頼のあるものを選びたいですよね。

そこで「迷ったらこれで間違いない!」という、サックス講師の私も使用していた教材を3つ紹介します。

サクソフォーン教本

音の出し方やロングトーン、リズム練習といった、基本的なトレーニングが一冊でできます。

音域が広くなく、簡単な内容ばかりなので、初心者に特におすすめ。サックス歴1年未満の方、まずは音を出してみたいという方は、この教本から始めてみてはいかがでしょうか。

サクソフォーンのためのトレーニングブック

音階練習には迷わずこれ!クラシックサックスの巨匠・須川展也さん監修の、初心者から上級者まで幅広く使われているトレーニングブックです。

全音域が網羅されており、簡単な音階から徐々にステップアップしていくことができます。

サクソフォンのための50の易しく漸新的な練習曲 第1巻

綺麗な曲やリズミカルな曲など、さまざまな練習曲が収録されていて、吹く技術だけでなく表現力も身に付けられます。

本の後半ほど難しくなっていき、ご自身のレベルに合わせて進めていけるので、1~2年目の初心者から中級者の方におすすめです。

Youtube動画も活用しよう!

最近はプロ奏者もYouTubeに動画を上げており、自宅にいながら無料でレッスンを受けることができます。手本を見ながら練習できるのは、独学の方にとって貴重な機会ですので、積極的に利用してみましょう。

ただし「一日で上手くなる」「今すぐできる」といった動画はおすすめしません。上達には毎日の積み重ねが不可欠であり、すぐ上手くなる方法はないからです。あくまで基礎練習の方法を解説している動画を参考にしましょう。

直接レッスンを受けた方が上達は早い

やはり、音楽教室などで講師から直接レッスンを受けた方が上達は早いです。苦手なポイントに対して適切なアドバイスを受けられるのが特に大きく、これは自分自身ではなかなか難しいもの。

また、はじめたての頃に間違ったクセがついてしまうと、それが定着して上達を遅らせてしまう可能性もあります。

最初は独学でやってみて、つまずくようなことがあれば、体験でも良いのでレッスンの受講を検討してみてください。

教室選びのポイント

教室選びで最も見るべきなのが、先生です。先生によってクラシック専攻だったりジャズ専攻だったり、得意分野や教え方が異なります。教室のWebサイトを見る際には、どのジャンルの先生なのか確認しましょう。

また、どの教室にもお試しレッスンがあるはずなので、申込みの前に利用して先生との相性を確かめることも大切です。

教室の探し方

レッスンにはグループレッスンと個人レッスンがありますが、個人に合った練習方法や改善方法を提案してもらえる分、個人レッスンがおすすめです。そして、できれば30分以上の時間がある教室を選びましょう。

また、自宅や近くのスタジオに講師が来てくれる出張型レッスンもあります。長く続けられることが大切ですので、自分のライフスタイルに適した方法にしましょう。

まとめ

今回は、サックス初心者が独学で上達するための方法やコツなどを解説しました。

独学でも、サックスは十分に上達できます。長期にわたって練習を続けることが大事なので、自分に合った方法を探りながら、焦らずじっくり取り組みましょう。