ベルギー出身のアドルフ・サックスにより発明されたサックス(サクソフォン)。
クラシックやジャズなどで使われる花形楽器として人気のサックスには、実は色んな種類があるのをご存じでしょうか。

本記事では、知っているようで知らないサックスの種類について現役サックス奏者が詳しく解説します。
よく見るあの形のものから、珍しいものまで紹介するので、サックスに少しでも興味がある方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。

案内人

  • 門田瑞紀中学校からサックスを始める。現在は、フリーのサックス奏者としてソロや室内楽で精力的に活動しながら、中学校や高校で後進の指導にもあたる。六甲道ミュージックスクールサックス講師。大阪音音楽大学演奏員。

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サックスは種類によって音域が違う

サックスは、管の長さによって音の高さが変わるので、楽器の大きさが小さくなるほど高い音、大きくなるほど低い音が出ます。
同族楽器のみで低音域から高音域までカバーできるこの特徴は、他の管楽器では類を見ません。

そんな優れた特徴を持つサックスの、種類ごとの特徴や役割について詳しく見ていきましょう。

定番のサックスの種類

発明当初は音域の異なるサックスが14種類も作られましたが、現在主に使用されているのは4種類です。
サックスは2オクターブ程度と比較的狭い音域しか出ないのですが、4種類合わせると4オクターブ以上と広い音域をカバーすることができます。

広い音域を生かして、ソロや吹奏楽の他、サックス四重奏など色んな場面で活躍しています。
音域の違いだけでなく、音色や担当する役割も異なるため、それぞれが主役になれる楽器と言っても過言ではありません。

ソプラノサックス

真っ直ぐで、縦笛のような形をしているソプラノサックス。4種類の中では1番高い音域が出る楽器で、とても華やかで澄んだ音が特徴です。
吹奏楽やオーケストラでは、ソロや目立つパートを吹くことが多いですよね。
サックス四重奏でも主にメロディラインを担当し、リーダー的な役割を担っています。

アルトサックス

サックスの中で最もポピュラーなのがアルトサックスです。
やわらかく美しい音や力強い音など、幅広い表現力を兼ね備えおり、主にソロやメロディーを担当します。
サックスの曲や教本は、ほとんどがアルトサックスのために書かれていますので、初心者や趣味でサックスを始める方に一番おすすめです

テナーサックス

男性の声のような豊かで温かみのある音が特徴的なサックス。
アルトサックスに形は似ていますが、テナーサックスはネック(マウスピースと楽器本体を繋いでいる管の部分)がしなやかにカーブしています。
ジャズや演歌でよく使われており、アルトサックスの次にポピュラーな種類です。
中音域なので吹奏楽やサックス四重奏では内声を担当することが多く、深い響きのある音色がハーモニーをより豊かにしてくれます。

バリトンサックス

4種類の中で1番低い音域を担当するバリトンサックス。アルトサックスの1オクターブ下の音域が出ます。
主にベースを担当するので、メロディやソロを吹くことはあまりありません。
なので、あまり目立つことはありませんが、力強く深いサウンドでバンドやアンサンブル全体を支える重要な役割を担います。
最近では太く美しいサウンドを生かして、ソロで演奏する人も増えてきていますね。

珍しいサックスの種類

次に、めったに見れない、珍しいサックスの種類をご紹介します。
一般的な楽器屋さんではほとんど売られておらず、プロでもなかなか入手できません。
この5種類を全て知っていたら、あなたはかなりのサックスマニアです!

ピッコロサックス(ソプリロ)

全てのサックスの種類の中で1番高い音域の出る楽器で、ソプラノサックスの1オクターブ上の音域が出ます。
全長約30センチで、両手におさまる程のサイズ。小さくて可愛い見た目ですが、あまりにも小さいためコントロールしづらく、吹きこなすのがとても難しい楽器です。
おもちゃの楽器のようなとても可愛い音を出します。

ソプラニーノサックス

ソプラノサックスを少し小さくしたような大きさで、見た目にはソプラノサックスとほとんど違いが分かりません。
アルトサックスの1オクターブ上の音域が出て、明るく特徴的な音をしています。
高音を簡単に出せますが、音程のコントロールにはかなりのテクニックが必要です。
サックスオーケストラやサックスアンサンブルでよく使われます。

バスサックス

テレビのCMで有名人が演奏していて話題になりましたね。
珍しい楽器の中では比較的入手しやすく、見かける機会も多いでしょう。
しかし、一般的な吹奏楽やオーケストラで使われることはほとんどありません。
大人くらいの大きさがあるので、持ちあげたり演奏するにはかなりの力が必要です。
動画はバスサックスとバリトンのデュオ。左側のバリトンサックスが小さく見えますね。

コントラバスサックス

世界的にも珍しく、日本には3本しかないと言われています。
サックスオーケストラやサックスアンサンブルでしか、見かけることはないでしょう。
管がとても長くて大きな楽器なので、成人男性でも5秒くらいしか息が続きません。
「ボー」と船の汽笛のような身体に響く重低音が出ます。

サブコントラバスサックス


サックスの中で1番大きな楽器で、抱えきれない程の太さが特徴です。
世界に数本しかない非常に珍しい楽器で、筆者もこの楽器だけは見たことがありません。
1人で持ち上げることは不可能なので、専用のスタンドに置いて演奏します。
かなりの肺活量が必要になるので、プロでも音を出すのは難しいでしょう。

まとめ

今回は、大きさや音域が違うサックスを9種類ご紹介しました。
一言にサックスと言っても、実はこんなに種類があるのです。
それぞれ色んな特徴があって面白いですよね。

サックスは管楽器の世界では比較的新しい楽器なので、表現力が豊かで演奏しやすい楽器です。
初心者でも始めやすいので、興味のある方はぜひ自身のお好みのサックスに挑戦してみてくださいね。