ピアノ演奏の上達には、地道な基礎練習が欠かせません。しかし、練習時間を確保したり練習メニューを組み立てたりすることは、初心者の方にとって簡単ではないでしょう。

  • 基礎練習は毎日しないとだめ?
  • 短時間で効率よく練習するにはどうすればいい?
  • どんな本を使うのが効果的?

多くの方がこのような悩みを抱えています。

そこで本記事では、毎日のピアノ基礎練習の必要性や、効率的な練習に最適なテキストについて解説します。初心者の方におすすめのピアノ学習用アプリもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください!

案内人

  • 古川友理名古屋芸術大学卒業。
    4歳よりピアノを始め、伊藤京子、深谷直仁、奥村真の各氏に師事。
    地元愛知県三河地方を中心に器楽、声楽、合唱伴奏者として活動する傍ら、島村楽器音楽教室等でピアノ講師として勤める。

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ピアノの基礎練習は毎日やるべき?

「1日練習をサボると、取り戻すのに3日かかる」

このような言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるでしょう。たしかに、ピアノ上達のためには、日々の基礎練習の積み重ねが重要です。

しかし、だからといって練習が負担やストレスになるのは良くありません。このせいでピアノを嫌いになっては元も子もないからです。

最も大切なのは「ピアノを楽しむ気持ち」です。よって「毎日」にとらわれすぎるのもやめましょう。ピアノに触れる時間を、生活の中で無理せず作りながら長く続けていくことが、楽しみながら上達を目指す秘訣といえます。

練習前のチェックポイント3つ

ピアノ練習の前に、正しいフォームで演奏するためのポイントを確認しましょう。

フォームが悪いと、腕や手をなめらかに動かせず、疲れやすくもなります。上達が阻害されるのは言うまでもないため、以下の3つを、初心者のうちから意識的にチェックすることが大切です。

①椅子の高さ

ベストな椅子の高さは、手を鍵盤に置いた状態で、肘から手首までが水平になるぐらいです。背筋を伸ばし、骨盤を起こした状態で座れるか、膝が直角になっているかもポイント。

椅子の高さが合っていないと、腕や手首に余計な力が加わり、演奏をしにくくなるだけでなく、体の節々を痛める可能性も出てきます。鏡に映すなどして、横からもよく確認しましょう。

②椅子の座り方

ピアノ演奏では、重心をやや前に傾けた状態で手足を動かします。ですので、椅子には座面の半分くらいを目安に、浅めに腰掛けましょう。

デスクチェアのように深く腰掛けると、身体の重さを鍵盤やペダルへ伝えにくくなり、演奏に支障をきたします。

③肘の角度

肘の角度については、椅子に座り鍵盤へ手を置いた状態で、90~120度ぐらいが目安となります。ベストな角度は弾く曲によって異なるため、調節可能な椅子を使うことも重要です。

例えば、早いパッセージを正確に弾くことを求められる曲では、椅子を低めにして肘の角度を狭くするなど。これにより体や腕が安定し、音をコントロールしやすくなります。

また、演奏中に腕を柔らかく使えるよう、脇は締めすぎず、肘と身体の間に少し空間を作っておきましょう。

④姿勢

一本の糸で天井から吊るされているイメージで背筋を伸ばし、肩の力をストンと抜きましょう。この姿勢を保つことで、正しい手のフォームをキープできるようになり、基礎練習の効果が現れやすくなります。

ピアノ初心者にありがちな失敗

初心者の方がピアノをはじめるにあたって失敗しやすいのが、楽譜選びと楽器選びです。

弾きたい曲が掲載されているという理由のみで楽譜を購入し「難しくて弾けない」と悩まれる方を、筆者はレッスンを担当する中で何度も目にしてきました。

自分が弾けるレベルであるかの判断は、楽譜をスラスラ読める状態でもなかなか難しいもの。レッスンを受けている方は、必ず先生に相談しましょう。

また、ピアノをはじめる前にタッチの軽いキーボードやシンセサイザーを購入し、教室のピアノとの弾き心地の差に愕然とされる方もいます。楽器選びはピアノの上達に直結するため、やはり先生や楽器店に相談してください。

ピアノ初心者がやるべき毎日の基礎練習~練習曲で基礎固め~

「基礎をしっかり固めて、いずれは難しい曲にもチャレンジしたい!」

そんな方には、日々のトレーニングの中に練習曲を取り入れることをおすすめします。ここでは、効率的に基礎練習を進められる4つの曲集を紹介します。

ハノン

テクニックの基礎を固めるための曲集で、ピアノ奏者であれば誰もが触れるであろう定番中の定番です。スケールやアルペジオなど、演奏に必要な技術が集約されています。

譜面通りに弾いても十分に上達できるものの、全体的に単調で飽きやすいという難点も。このシンプルさこそ基本練習において重要なのですが、どうせなら楽しみもほしいですよね。

そこで、手のフォームを確認しながらゆっくり弾く、リズムやテンポ、調性を変えて弾くといったメニューも取り入れると、より効果的で飽きの来ない練習が可能になります。

バイエル

ピアノの導入教材として、長きに渡り親しまれてきた教則本です。

106の短い練習曲が収録されており、最初の40曲は片手のみ、41曲目から両手に移行していきます。強弱記号や調性など、ピアノ演奏における重要な要素が段階的に組み込まれているため、譜読みが苦手な方でも無理なく進められます。

また、一曲一曲が短いので、まとまった時間がとれない方でも取り組みやすいでしょう。

ツェルニー

ドイツの作曲家ツェルニーが作った練習曲を集めた、譜読みとテクニック向上のための曲集です。

レベル順に100番<30番<40番<50番<60番の5種類が出版されており、これらの中から指練習に効果的な曲を抜粋したテキストも多数存在します。自身の上達に応じて取り組むのはもちろん、音階、アルペジオ、左手の連符など、苦手なテクニックを含む曲を取り出して練習するのも効果的です。

ブルグミュラー

音楽性の高い作品が収録された曲集で、発表会やコンクールの課題曲として選ばれることもあります。

テクニックだけでなく表現力も同時に身に付けられ、基礎練習をしながらもピアノ演奏をしている感覚を味わいやすい教材といえます。

ピアノ基礎練習を継続するポイント

ここからは、基礎練習を日々継続的に行うポイントをお伝えします。

短時間でもOK!

練習時間は、1日20分などの短時間でも構いません。

それなりの時間を取ろうとすると、どうしても日常生活全体が圧迫されます。これによって練習が負担になり、ピアノを素直に楽しめなくなっては意味がありません。

まずは、SNSや動画サイトを見ている時間を、少し練習にあててみませんか?無理なく取り組めるはずですし、習慣化もしやすいはずです。

もちろん、時間の余裕があるときに多めに練習すると、より上達は早くなります。

集中できる環境を整える

効率的な練習には、集中できる環境づくりが大切です。

スマホやパソコン、雑誌といった気が散る原因は、ピアノのまわりから排除しましょう。また、リビングなどで家族の様子を気にかけながら練習する場合には、少しでも音に集中できるようヘッドホンを使うのがおすすめです。

まずはウォーミングアップから

ピアノ演奏というのは、見た目以上に体力を使う全身運動です。

準備運動なしのスポーツがケガにつながるのと同様、ウォーミングアップなしで弾きはじめると、余計な力みによって手首や腕を故障する恐れがあります。

ですので、音を鳴らす前に正しい姿勢や手のフォームを確認し、その上で単純なフレーズで身体や手をほぐしてから練習に進みましょう。

ピアノ基礎練習にはアプリ「flowkey」もおすすめ!

ピアノ基礎練習において重要なもうひとつのポイント。それは、自分のレベルに合った曲を選ぶことです。

はじめから難易度の高い曲に挑戦し、挫折してしまう方は多くいらっしゃいます。「憧れの曲を弾けるようになりたい」という思いを抱くことは素晴らしいのですが、それはあくまで中長期的な目標にしましょう。

そこでおすすめなのが「flowkey」というアプリ。1,000以上の収録楽曲の中から自分のレベルに合った曲を選べて、正しく演奏できているかまで判定してくれるピアノ独学ツールです。

実物の楽譜だと管理が大変なうえ、難しすぎるものを買うとお金や労力が無駄になりやすくなります。一方、flowkeyなら、楽譜や各機能をスマホやタブレットで自由に利用可能。月額2,100円(1ヶ月プラン)のサブスク制ということで、楽譜代の節約にもなります。

7日間の無料トライアルもあるので、まずは無料で試してみるのがよいでしょう。

もっと上達したいならレッスンを受けよう!

正しい練習を丁寧に積み重ねていけば、ピアノ演奏は独学でも身に付けられます。

ただ、行き詰まったときに自分の力だけで乗り切るのは、プロでも困難です。モチベーションを高く保つことも容易ではありません。

こうした問題に対して心強いのが、ピアノレッスンです。

  • 最適な練習方法
  • 演奏のポイント
  • 姿勢やフォームの改善点
  • 曲に関する歴史的背景などの知識
  • モチベーションを維持するコツ

このような上達へのカギを、知識と経験が豊富な講師から直接指導してもらえます。第三者による的確なアドバイスを受けることで、独学よりスピーディーな上達が可能になります。

まとめ

基礎練習の積み上げは、ピアノ上達における重要なポイントです。が、初心者の方にとっては、楽しむ気持ちを忘れず長く続けることこそ、毎日の練習以上に大切といえます。

繰り返しになりますが、一日20分程度の練習でも十分です。隙間時間をうまく利用し、徐々にテクニックを磨いていきましょう。