「もっといい音でピアノの録音をしたい」 「自分でピアノの録音をしたいけど、マイク選びに悩んでいる」 「マイクの種類がありすぎて、どれを選べばいいかわからない」 「クラシックのピアノ録音に向いているマイクってあるの、、?」とお悩みではありませんか?
実は、マイクにも向いているジャンルというものがあります。また、どんな音を求めるかにより、マイクのセレクトが変わってきます。せっかく高いお金を出して購入するものなので、失敗したくないですよね。
本記事では、なるべく難しい専門用語を使わず、わかりずらい技術的な部分は割愛し、初心者の方が読んでもわかりやすい内容で案内します。是非マイク選びの参考にしてみてください。
ミヤモトケンジ(レコーディングエンジニア)
- クラシックのレコーディングをメインに、インスタレーションでの音響制作や音楽制作など、坂本龍一トリビュートをはじめ、数々の作品に参加。また、クラシックに関わる様々なプロジェクトを展開中。
目次
ピアノ録音にはどんなマイクを選べばいい?購入前に覚えたい3つの基礎知識
マイクの基礎知識1 ダイナミックマイクとコンデンサーマイク
マイクの種類は大きくわけて「ダイナミックマイク」と「コンデンサーマイク」の2つに分類されます。
ダイナミックマイク
耐久性が高く、ライブやイベント司会、カラオケ等でよく使われるマイク。多少雑に扱ってもなかなか壊れづらく、集音できる音域の幅(低い音から高い音まで)がコンデンサーマイクに比べて狭い。
コンデンサーマイク
ダイナミックマイクに比べて扱いは繊細だが、集音できる音域の幅(低い音から高い音まで)が広い。
と、ざっくり覚えてもらえれば大丈夫です。つまり、低い音から高い音まで幅のあるピアノの録音用途には「コンデンサーマイク」が適しています。
マイクの基礎知識2 単一指向性と無指向性
コンデンサーマイクの中でも2種類、「単一指向性」と「無指向性」に分類されます。
単一指向性
マイクの向いている方向の音をよくひろうマイク
無指向性
マイクの向いていない方向の音も良くひろうマイク
ピアノの録音では目指す音やレコーディング環境により、どちらのタイプも使われますが、自宅等の防音していない環境や、まわりの騒音が気になる場所での録音には、単一指向性マイクが向いています。
ホール等で、まわりの騒音・雑音も気にならない、音場環境が良い場所での録音の場合は無指向性マイクがお勧めです。
なお、クラシックの音源で音が良いとされる基準の一つとして、楽器と会場(ホール等)の響きが豊かに収録されているかということも重要です。
無指向性マイクは楽器本体以外の音もよく集音出来るため、その場の響きも含めて録音することが出来ます。
一方、指向性マイクは向いている方向以外の音はあまり入ってこないので(これが指向性マイクのメリットでもあります)、響きを重視した録音は難しいです。
また、単一指向性マイクと無指向性マイクを組み合わせて使う録音方法もあります。
マイクの基礎知識3 マイクの形(ラージダイアフラムとスモールダイアフラム)について
最後にマイクの形について。こちらも大きく二種類となります。
スモールダイアフラム
ペンシル型の形をしているマイク。特徴は音圧に強く、音の立ち上がりが早い。周波数レンジ(低い音から高い音まで)が広い。
ラージダイアフラム
長方形型のマイク。ペンシル型に比べて、音圧に弱く音の立ち上がりが遅い。周波数レンジ(低い音から高い音まで)が狭い。
クラシックのピアノ録音では、ピアニッシモからの突発的なフォルテ等もよく出てきますよね。
そんな奏者のタッチや音の立ち上がりを出来る限り忠実に録音したいという場合、スモールダイアフラムのマイクが適しています。
ただし、これはあくまで一般論です。後述するおすすめマイクに、ラージダイアフラムのマイクも出てきます。
マイクの形による音の傾向については、あくまで参考程度にしてください。メーカーや種類により、ここまで説明した内容をいい意味で裏切るマイクは複数あります。
ピアノの録音にマイクは何本必要?
クラシックのピアノ録音にはマイクが2本必要です。
1本じゃないの、、?と思った方、わかります。だって、ギターとか他の楽器は一本で録音しているの見たことありますよね。
もちろん、ピアノもマイク一本で録音することはあります。どんな状況かというと、いろんな楽器のアンサンブルの中の一つで、なおかつ、そこまでピアノにフォーカスする必要がない場合です。
いわゆるピアノ・ソロや少人数編成の中のピアノを録音する場合には、マイクを2本使うのがおすすめです。理由は大きく2つ。
1本での録音(モノラル録音)に比べて、より立体的に臨場感のある音を録音(ステレオ録音)することが出来る。
音域が広い楽器なので、一本のマイクでは低音から高音までの幅(音域)をカバーすることが出来ない。
実際には求める音質により、さらに複数のマイクを設置するパターンがありますが、基本は2本と覚えておけば大丈夫です。
[予算別]クラシックのピアノ録音にお勧めのマイク
続いて予算ごとにオススメのコンデンサーマイクを紹介します。
ピアノ録音を今後、長く続けていく予定のある方は、出来る限り最初からいいマイクを揃えることをお勧めします。
安いマイク→少し高いマイク、、と徐々にレベルアップしていくのも、経験としてはいいかもしれませんが、それは録音の仕事をしたい人向けの話。
そうでない人がこの順番で揃えていくと、回り道した分だけ出費がかさみます。最初からいいものを買うことで、余計なコストを抑えることが出来るわけです。
人柱になった僕の意見を、是非参考にしてみてください、、笑
また、可能であればマッチドペアのマイクを選ぶことをお勧めします。
*マッチドペアとは
同じ2本のマイクでも個体差のある場合があります。マッチドペア(ペアマッチングともいいます)は、事前に2本のマイクをメーカー側で測定し、特性の揃っているマイクセットのことです。
2本で5万円以内のマイク
RODE ( ロード ) / M5 Matched Pair ステレオペアマッチング・コンデンサーマイク
単一指向性のスモールダイアフラムマイク。低価格ながら評判の良いマイクで、アマチュアの方によく使われている印象です。初めてのマイク選びや自宅・スタジオでの録音にお勧めです。
SE ELECTRONICS ( エスイーエレクトロニクス ) / SE8 OMNI PAIR
無指向性のスモールダイアフラムマイク。ホール等、音響の良い広めのスペースで録音するのにお勧めです。
2本で10万円以内のマイク
EARTHWORKS ( アースワークス ) / TC20
*上記リンクは1本分のお値段になります。
無指向性のスモールダイアフラムマイク。測定用と記載されていますが、ピアノ録音にも十分向いています。ただし、自宅等の狭いスペースや騒音が気になる環境では、あまり向いていません。
2本で20万円以内のマイク
ここからは、プロクオリティのマイクになります。
NEUMANN ( ノイマン ) / KM 184 mt stereo set
単一指向性のスモールダイアフラムマイク。中高域(高い音)のきらびやかさが特徴のマイク。ピアノ以外にも、ヴァイオリン等の弦楽器にもよく使われます。
AKG ( アーカーゲー ) / C414 XLS STEREO SET コンデンサーマイク
単一指向性、無指向性を含む9段階の指向性切り替え可能なラージダイアフラムマイク。ピアノ以外の楽器や声も録音したいという方向け。これさえあれば的な万能マイクです。
2本で20万円オーバーのマイク
SCHOEPS ( ショップス ) / Stereo-Set MK 5
単一指向性と無指向性の切替が可能なスモールダイアフラムマイク。クラシックでは定番のマイクで、皆さんがよく聞かれるクラシックのピアノCDにも良く使われているマイクです。
DPA ( ディーピーエー ) / ST4006A
King of 無指向性マイク。(スモールダイアフラム)
DPAの前身である「B&K」というメーカーの時代から、クラシックの世界では定番のマイクです。
クラシック以外のジャンルにおいても、その性能の良さからよく使われているマイクで、対象から距離があっても、他のマイクに比べてクリアでリアルに音像を表現します。
これがあれば、無指向性マイクの買い替えは今後なくて大丈夫と言いきれます。
[あると便利なグッズ]
マイクの設置時、マイクスタンドを2本使用するのでもちろん問題ありませんが、ステレオバーを使うとことで、手軽にスペースをとらず、1本のマイクスタンドに2本のマイクを設置することが可能となります。
K&M ( ケーアンドエム ) / 23550
まとめ
今回はクラシックのピアノレコーディングにお勧めのマイクを紹介しました。
マイクを購入すると、接続するケーブルやレコーダー等も必要になります。
そのあたりが面倒だと思われる方は、レコーダー単体機の購入がおすすめですので、下記の記事を参考にしてみてください。