トロンボーンを演奏する上でなくてはならないマウスピース。楽器本体と同じように、吹きやすさや音の質に大きな影響を与えます。
マウスピースを変えただけでこんな劇的な変化が起きることもあるあるです。
- 出なかった音が出た
- 吹けなかったフレーズが吹けた
- 音が良くなったと言われた
では一体、自分にピッタリなマウスピースはどう選んだらいいの?そんな疑問にプロトロンボーン奏者である筆者が答えます!最後まで読んでもらえれば、あなたはもうマウスピース選びに悩むことはなくなるでしょう。
案内人
- 武崎創一郎広島交響楽団バストロンボーン奏者。
演奏家をつとめる傍ら、メディアへの寄稿やSNS運用も手がけている。
自身のTwitterとブログではオーケストラ奏者×子育てのセキララを発信中。
目次
トロンボーンはマウスピースによって音色が劇的に変わる!
トロンボーンの音を生んでいるのは、マウスピース内に収まっている唇の振動です。
そのため、マウスピースによって唇の振動の起こり方や伝わり方が変わるので、マウスピースが変われば音色も変わります。さらには、吹きやすさや音量・音域にまで影響がでます。
つまり、自分の吹き方や唇の形に合ったマウスピースを選ぶということは、良い演奏をするための必須条件なのです。
トロンボーンのマウスピース~種類に応じた選び方~
ここからは選ぶ基準を「トロンボーンの種類」「マウスピースの表面塗装」「マウスピースの形状」の3つに分けて解説します。
あくまでも一般的な目安としての解説です。実際に吹いてみるまでプレイヤーや楽器本体との相性はわからない、ということを覚えておいてくださいね。
トロンボーンの種類
まずは、トロンボーンの種類に対してマウスピースが合っているかを確認しましょう。太管のマウスピースは細管のトロンボーンには装着できませんし、逆もしかり。
また、特別な楽器で使うために作られている下記マウスピースもあります。
- コントラバストロンボーン用
- アルトトロンボーン用
- ジャズトロンボーン用
- ドイツのハンドメイド楽器用
型番とカタログをよく参照し、可能であれば楽器店のスタッフに確認しましょう。
とくにコントラバストロンボーン用とドイツのハンドメイド楽器用のものは、マウスピースの長さやカップのサイズが大きく変わっています。楽器に装着できたとしても本来の性能は発揮できないので注意してください。
テナートロンボーンとバストロンボーン向けに推奨するサイズに関しては、おすすめのマウスピースとともに後述します。
マウスピースの表面塗装
実はメッキの種類によっても音色や吹奏感が変わることを知っていますか?
人気があるのはゴールドメッキやピンクゴールドメッキです。どちらも唇が滑りやすくなり、多くのプレイヤーが「音色が暖かくワイドになる」と感じています。
金属アレルギーに悩んでいる方にはプラチナメッキがおすすめです。
ちなみに、楽器店の在庫として販売されているマウスピースは、ほとんどがシルバーかゴールドです。プラチナやピンクゴールドを使いたい場合は購入したマウスピースにメッキをかけてもらいましょう。全ての面ではなく、マウスピースの内側とリムのみメッキをかける、といった加工も可能です。
マウスピースの形状
メーカーやメッキよりもトロンボーンの音色や吹奏感に大きな影響を与えるのが、マウスピースの形やサイズです。
部位ひとつひとつに焦点を当てながら、形状と特徴を見ていきましょう。
カップ
マウスピースのお椀の部分をカップと呼びます。カップが深ければ暗い音になり低音を演奏しやすくなり、浅ければ明るい音になり音が立ちあがりやすくなります。
好みの音色で選ぶのももちろん良いのですが、まずは自分の奏法に合っていて吹きやすいことを大切にしてくださいね。
また、カップはUの形をしているものがほとんどですがVの形のものもあります。V形は太く暗い音を作りやすいのが特徴です。
リム
トロンボーンを演奏する際に唇が触れる部分をリムと呼びます。
マウスピースのサイズに関しては、リムの大きさが演奏に最も大きな影響を与えるでしょう。
リムの内径が小さければ明るい音になり、高音域を演奏しやすくなります。逆に、リム内径が大きければ、暗く太い音になり低音域がコントロールしやすくなるのです。
また、リムそのものの厚さや縁取りが丸いか平坦かでも安定感が変わります。これはプレイヤーとの相性次第なので、たくさん試してみてくださいね。
スロート
カップから息が流れる出口にあたる部分がスロートです。
スロートの直径が太ければ息がスムーズに流れて音色がオープンになりますが、高音が出しにくくバテやすくなります。
一方、スロートが細くなれば、音の反応が良くなり高音も吹きやすくなりますが、詰まった音になる傾向があります。
スロート径は吹奏感に大きく影響する部分ですので、やはり色々なマウスピースを吹き比べて選びましょう。
おすすめのトロンボーンマウスピース
ここからはプロトロンボーン奏者である筆者がおすすめするマウスピースを3つ紹介します。
もちろん他にも紹介したいマウスピースは山ほどありますが、まずは今回とり上げたメーカーを試してみて下さいね。
Bach
トロンボーン本体のメーカーとしても有名なVincent Bach (ヴィンセント・バック)はもともとマウスピース製作から始まったブランドです。日本では最もシェアが多いメーカーのひとつです。
多様なサイズが展開されているうえに、スタンダードな音色と吹奏感を持っているのが特徴。しかもトロンボーンを扱っている楽器店のほとんどが在庫を所持しているはずですから、実際に手に取って吹いて選べます。
テナートロンボーン:5Gから6-1/2の間
バストロンボーン:1-1/2から3Gの間
YAMAHA(ヤマハ)
トロンボーン本体であれば日本トップシェアを誇るメーカー。小中高生なら学校で使っているトロンボーンはほとんどがYAMAHAでしょう。
YAMAHAのトロンボーンに同社のマウスピースがフィットするのは言うまでもありません。楽器店での取り扱いが多く、購入前にしっかり試奏ができるのもおすすめポイントの一つです。
テナートロンボーン:48〜53
バストロンボーン:58〜60
ウィリーズカスタムブラス
willie’s Custom Brass(ウィリーズ・カスタム・ブラス)は、ひとつひとつ違うコンセプトを持つモデルを無数にリリースしているブランドです。
世界的なトロンボーン奏者である玉木優やペーター・シュタイナーをはじめとする、プロの演奏家との対話から生まれたシグネチャーモデルも魅力的です。
筆者もいくつかのモデルを吹きましたが、どのモデルにも共通するのは「圧倒的に吹きやすい」こと。私のトロンボーンってこんなに吹きやすかったんだ!と思わず言ってしまうような、軽やかな吹奏感があります。
全国の楽器店で取り扱っており、ラインナップはアルトトロンボーン用からコントラバストロンボーン用まで揃っています。
代表の中込氏が日本中を飛び回ってマウスピース相談会を開催されていますので、チャンスがあれば会いに行ってみてくださいね。
まとめ
トロンボーン吹きになくてはならないマウスピース。奏者が成長すればフィットするマウスピースも変わりますし、好みによってお気に入りのメーカーも違うでしょう。
トロンボーン奏者にとってマウスピース選びはライフワークとも言えます。焦らずにじっくりと自分に合うマウスピースを探して下さいね。