アコースティックピアノは管理が難しそうだから買えないけど、できるだけ本物のピアノに近いタッチで練習したい!という方にはハイブリッドピアノがおすすめです。

筆者も自宅の練習用ピアノとして17年間愛用しています。

そこで今回は、ハイブリッドピアノを買う前に知っておきたいポイントや、メリットデメリット、メーカーごとの特色などを実体験を交えて解説します!ぜひ参考にしてください。

案内人

  • 海老野みほ4歳からエレクトーンを始め、高校生の時にピアノに転向。
    音楽系専門学校に進学し、クラシック・ジャズ・POPs・作曲・アレンジなど、様々なジャンルの知識を身につけながら演奏活動を行う。
    2011年から都内の音楽スクールのピアノ講師として勤務。

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ハイブリッドピアノとは?

ハイブリッドピアノとは、ハンマーアクションが搭載された電子ピアノです。デジタル音源でありながら、本物のピアノのタッチ感を味わうことができます。

いったいどういうことなのか?音の出る仕組みについてそれぞれ解説していきます。

アコースティックピアノの音の出る仕組み

アコースティックピアノ(グランドピアノ・アップライトピアノ)は、鍵盤を押すと連動しているハンマーが弦を叩き、その振動が響板に伝わって音が鳴ります。楽器全体で音を出すイメージで、電子機器は一切使われていません。

電子ピアノの音の出る仕組み

電子ピアノは鍵盤の下にセンサーがあり、鍵盤を押すとサンプリング(録音)されたピアノの音がでます。そのため、ドラムやトランペットなどピアノ以外の音も楽しむことができるのです。

ハイブリッドピアノの音の出る仕組み

ハイブリッドピアノは、鍵盤を押すと連動したハンマーがセンサーを押してサンプリング(録音)された音を出します。電子ピアノの一種となりますが、ハンマーが内蔵されていることでアコースティックピアノと同じタッチ感を味わうことができます。

ハイブリッドピアノのメリット

ハイブリッドピアノのメリットを3つご紹介します。

鍵盤のタッチがリアル

通常の電子ピアノは鍵盤の抵抗感が擬似的に作られているため、アコースティックピアノとは指の力のかけ方が違います。そのため、いざアコースティックピアノで演奏してみると、練習の成果が発揮できないということが起こります。

その点ハイブリッドピアノは、ハンマーの動きをリアルに感じながら弾き方や強さのコントロールも練習できるので、アコースティックピアノで弾いても練習通りに演奏できるのです。

調律がいらない

アコースティックピアノの弦は湿度や温度で音程が変わってしまうため、半年〜1年に1回は調律で正しい音程に戻すことが必要です。調律は1回で1万円〜1万5千円くらいかかります。
ですがハイブリッドピアノの場合は、電子ピアノですのでこまめなメンテナンスは必要ありません。

調律については下記記事で詳しくご紹介していますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。

ヘッドホンが使える

ハイブリッドピアノはヘッドフォンを使って練習できます。

アコースティックピアノの場合、消音ユニットを付ければヘッドフォンで練習することが可能です。
ただし、消音機能はハンマーが弦に触れないようにした状態で、鍵盤の動きをセンサーで感知しサンプリングした音が出る仕組みのため、電子ピアノを弾いているのと同じです。

練習はいつもヘッドフォンでしているという方は、メンテナンスが不要のハイブリッドピアノを選ぶ方が調律のコストをおさえることができます。

ヘッドフォンの選び方については下記記事で詳しくご紹介しているので、併せてご参照ください。

ハイブリッドピアノのデメリット

機能やメンテナンス面でメリットの多いハイブリッドピアノですが、デメリットも存在します。ここでは筆者の考えるハイブリッドピアノのデメリット2つをご紹介します。

生音ではない

最初に解説した通り、ハイブリッドピアノはサンプリング音源です。

近年どこのピアノメーカーもよりリアルな音で演奏できるようになっています。
ですが生の音と比べると、スピーカーを通した音は倍音や共鳴音など音以外の響きの量が少なく、筆者としては音の厚みの違いを感じます。

電子ピアノに比べて価格が高い

ハイブリッドピアノは通常の電子ピアノに比べるとやはり高額になります。
メーカーにより価格帯は前後しますが、共通しているのは『電子ピアノの最上位ランクにハイブリッドピアノが位置している』ということです。

価格については後ほど詳しくご紹介しますが、ハイブリッドピアノを検討する場合は30万円以上と考えておきましょう。

ハイブリッドピアノの寿命

ハイブリッドピアノの寿命は、他の電子ピアノと同じ10年〜20年程です。
長く使っていると鍵盤の機構がゆるんだり、センサーの感度が落ちてきたりと部品の消耗や劣化は免れません。
もちろん各部品を修理すれば寿命を伸ばすことができますが、生産中止になった機種は部品の製造もストップしてしまうため、部品がなく修理できない可能性もでてきます。

アコースティックピアノと電子ピアノの寿命については、以下の記事で詳しく解説しています。

ハイブリッドピアノはこんな人におすすめ!

  • タッチにこだわりたい人
  • 本当はアコースティックピアノが欲しいけど、音漏れなど住環境への不安がある人
  • ピアノ中級以上で電子ピアノの購入を検討している人
  • メンテナンスの手間を省きたい人

逆におすすめできない方はこちらです。

  • 生のピアノ音色にこだわりがある人
  • 費用を抑えたい人

予算や設置場所、練習環境などを比べて自分にあった楽器を選びましょう。

ハイブリッドピアノの価格

ハイブリッドピアノを販売している3つの大手メーカーの価格帯はこのようになっています。

ヤマハ ¥437,800〜¥1,760,000
カワイ ¥715,000〜¥1,012,000
カシオ ¥324,500〜¥462,000
※参考情報:公式サイト及びECサイトでの価格(2022年12月現在)

ハイブリッドピアノの中でも価格によってタッチ感やスピーカーの性能、搭載されている音色や練習機能が変わってきます。

それぞれのメーカーの特徴や機種の違いを見ていきましょう。

ハイブリッドピアノのおすすめ機種比較:①YAMAHA

ヤマハのアコースティックピアノは、ショパン国際コンクールなど世界的なピアノコンクールで使用されるほどクオリティの高さが認められています。

ハイブリッドピアノにも同社のノウハウが活かされ、弾き心地や音色の細部までアコースティックピアノに近くなるように開発されているのが特徴です。
また、価格帯の幅が広く、予算に合わせて機種を検討できるのがヤマハの魅力です。

NU1X|アバングランド


アップライトピアノと同じ縦型ハンマーアクションが搭載されたハイブリッドピアノ。
50万円以下で購入することができ、ハイブリッドピアノの中では手の出しやすい価格帯の機種です。

【公式】YAMAHA|NU1X

【YAMAHA】 NU1Xアバングランド

N1X|アバングランド


グランドピアノのような横型ハンマーアクションが搭載されたハイブリッドピアノです。
ヤマハの中で最上位ランクの鍵盤システムが使われています。

これより上の機種はサウンド面のクオリティを上げた機種で価格帯が大きく上がるため、サウンドより弾き心地を重視して選ぶ場合はN1Xがおすすめです。

【公式】YAMAHA|N1X

N2|アバングランド


N2はコンパクトなデザインでありながら、グランドピアノと同じ奥行きのある響きで聞こえるように、それぞれ音域によって専用のスピーカーが搭載されています。

演奏の時に感じる微妙な振動も再現され、電子ピアノであることを忘れるほどリアルな弾き心地が再現されているモデルです。

【公式】YAMAHA|N2

N3X|アバングランド


ヤマハの電子ピアノの中で最高級の技術が詰まったアバングランドのフラグシップモデル。グランドピアノの最高峰『CFX』とオーストリアの老舗ピアノメーカーベーゼンドルファーのフラグシップモデル『インペリアル』の音色が搭載されています。

グランドピアノのようなフォルムで高級感があり、インテリアとしても魅力的です。

【公式】YAMAHA|N3X

ハイブリッドピアノのおすすめ機種比較:②KAWAI

カワイは奥深いピアノ音色が特色のメーカーです。特にスピーカーは、音響専門メーカーとタッグを組んで開発されています。

カワイのハイブリッドピアノのNVシリーズには2機種あります。

NV5S|NOVUS

アップライトの縦型ハンマーアクションが内蔵されたモデルです。

響板スピーカーという、演奏すると響板(ピアノ背面に設置されている木の板)の振動も一緒にコントロールされるシステムが搭載されています。それによりスピーカーからの音だけではなく、自然な共鳴音なども合わさり重厚な響きを生み出すのです。

響板スピーカーはNV10Sには搭載されていない、NV5Sだけの特色です。

【公式】KAWAI|NV5S

NV10S|NOVUS

NV10Sには、グランドピアノの横型ハンマーアクションが内蔵されています。
NV5Sとの性能の差はあまりなく、アップライトの縦型ハンマーか、グランドピアノの横型ハンマーかの違いくらいでしょう。

より繊細な表現(ピアニッシモの連打など)にこだわりたい方におすすめのモデルです。

【公式】KAWAI|NV10S

ハイブリッドピアノのおすすめ機種比較:③CASIO

カシオは子ども向けのキーボードから本格的な電子ピアノまで製造しているメーカーです。
ローコストなラインナップで、電子ピアノ部門では常に売れ筋ランキングの上位に入っています。

同社のハイブリッドピアノには、ドイツのピアノメーカー『ベヒシュタイン』と共同開発で作られた透明感のある音色をはじめ、華やかな響きの音色や古典的な重厚感のある音色の3つが搭載されています。

GP-310|CELVIANO Grand Hybrid

ハイブリッドピアノの中では珍しく木目調仕上げの製品です。
インテリアとして馴染みやすく、デザインにこだわりたい方にもおすすめ。
天板を開閉することができ、コンサートホールで演奏しているような音の広がりの中で演奏することができます。

【公式】CASIO|GP-310

GP-510|CELVIANO Grand Hybrid


GP-510にはテーマに合わせて音色や響き、残響などが細かくプリセットされた、シーンという機能が追加されています。

過去の有名な作曲家やピアニストが弾いていた環境を表現したプリセットや、音楽ジャンルをテーマとしたプリセットなど、15種類から選んで使用できます。自分でオリジナルの組み合わせを登録することも可能です。

【公式】CASIO|GP-510

他の電子ピアノとも比較したい!

ハイブリッドピアノだけではなく、さまざまなメーカーの電子ピアノおすすめモデルと比較検討したい方は下記記事も併せてご覧ください。

まとめ

ハイブリッドピアノはアコースティックピアノと電子ピアノの良いところを融合した楽器です。

費用はかかりますが、その価値は十分すぎるほどにあるでしょう。

ぜひ楽器店へ足を運び、一度ハイブリッドピアノと普通の電子ピアノを弾き比べて、その違いを実感してみてください。