これから「作曲したいな」と思う方が、まず最初に考えるのが「楽譜作成ソフト」の購入かと思います。
楽譜作成ソフトの種類は多く、それぞれ多彩な機能も搭載されており、購入される方の状況や用途、環境に合わせて選ぶことができます。ですが、選択の幅が広がると、何を基準にして選べば良いか迷うでしょう。
そこで今回は私が作曲家として活動してきた中で経験してきたこと、見聞きしてきたことを踏まえて、おすすめの楽譜作成ソフトを紹介していきます!これから楽譜作成ソフトの購入を考えている方の1つのアドヴァイスとなれば幸いです。
案内人
- 野坂公紀(作曲家)1984年、青森県十和田市出身。 青森県立七戸高校卒業。 2006年にいわき明星大学人文学部現代社会学科を卒業。作曲は独学後、作曲を飯島俊成氏、後藤望友氏に師事…
目次
購入前に、、楽譜作成ソフトを理解しましょう
楽譜作成ソフトを購入する前に、しっかり意識しなければならないことがあります。それは・・・
楽譜作成ソフトは「楽譜を作るためのソフト」であって「作曲をするためのソフト」ではありません!!
「・・・ん??そんなの当たり前でしょ??」と、思われた方が大多数かと思います。ですが、これ、とっても大事なことなんです。
現在販売されている、ほとんどの楽譜作成ソフトには「プレイバック機能(再生機能)」がついています。
この機能は書いた音を素直に、しかも良い音で再現(演奏)してくれる非常に便利な機能です。ですが、それ故に作曲する上で大きな障害を作ってしまう場合もあります。特にオーケストレーションを行う上で顕著に現れます。
例えば、トランペットの下線音域でのスタッカートはプレイバック機能では、しっかりと聴こえてきます。しかし実際に演奏すると奏者にとっては辛く、トランペットらしい音は期待できません。
もし作曲の上で表現したいのであればオーケストレーションの工夫、または楽曲上での特殊効果を狙うべきでしょう。
もう1つよくある例として、鍵盤打楽器であるグロッケンのトリルはプレイバック機能を使うと、とても綺麗に聴こえます。
しかし実際の演奏では、濁った響きになってしまうか、とても鋭い音になってしまいます。爽やかで綺麗なグロッケンらしい響きをトリルで得るためには、かなり工夫が必要です。
以上の例のように、楽譜作成ソフトを使うための知識と、作曲をするための知識はまったくの別物です。
そして、既存の出版楽譜を基に、楽譜レイアウトを勉強するのも忘れてはいけません。筆者も昔はBoosey & Hawkes社の楽譜をよく参考にしていました。
楽譜作成ソフトは安い買い物ではありません。せっかく買ったのなら効果的に使い、自身の音楽活動にプラスになるようにしましょう。
次の項からはおすすめのソフトを、それぞれの特徴や筆者のおすすめポイントを交えて、ご紹介致します。
今回おすすめする楽譜作成ソフトは、
Finale
Sibelius
Notion
Dorico
以上の4種類です!
楽譜作成ソフトのおすすめ①「Finale(フィナーレ)」
楽譜作成ソフトの王道、Finale。
楽譜作成ソフトの進化の歴史はFinaleと共にあったと言っても過言ではありません。楽譜作成ソフトの購入にあたってFinaleは無難で堅実な選択です!
迷ったときや、何も分からないとき、楽譜作成ソフト初心者であれば、Finaleを選ぶというのは間違いがないでしょう。ちなみに筆者も初めての楽譜作成ソフトはFinaleでした。
Finaleの特徴
Finaleは文句のつけようが無いくらい楽譜作成ソフトとしては完璧なソフトです。それくらいFinaleに作れない楽譜は、ほとんど無いと思います。
驚くほど細かな調整も可能なため、操作方法が幾分難しいこともあるのですが、利用しているユーザー数が多いので操作において分からないことがあったとしても、インターネットで検索すると大概の操作方法が分かります。
ただ、Finaleは楽譜作成ソフトの機能として十二分に特化しているため、音源制作をするために使うDAWソフトとの連携に関しては少し弱いかと思います。
しかし、先述したように楽譜作成ソフトとしては秀逸であることは疑う余地がありませんので、購入にあたってはFinaleを第一選択として良いかと思います。
予め、使用感を知りたい方はフリーの無料体験版「Finale note pad」を公式サイトでダウンロードして使ってみるのも良いでしょう。機能制限はあるもののFinaleの使い心地を知る分には十分だと思います。
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楽譜作成ソフトのおすすめ②「Sibelius(シベリウス)」
Finaleと並んで代表的な楽譜作成ソフトとして挙げられるのは「Sibelius」です。ちなみに筆者はFinaleから乗り換えて現在、Sibeliusを使っております。
多分、楽譜作成ソフトを初めて買う方はFinaleかSibeliusで迷うかと思います。
先に結論から申し上げますと・・・。
「Finale、Sibelius、どちらを買っても間違いないです」
先ほど、「Finaleに作れない楽譜はほとんど無い」と書きましたが、「Sibeliusにも作れない楽譜はほとんど無い」と言えます。
FinaleからSibeliusに乗り換えた私も、使い勝手の悪さを感じたことはありません。むしろ、ショートカットキーなどを使いながらのキーボード入力はSibeliusのほうが操作しやすいかもしれません。
あくまで個人的な感想ですが、初心者の方にはSibeliusのほうが使いやすいと思います。また、FinaleよりSibeliusのほうが普段のPC操作とあまり変わりない感覚で楽譜作成ができると感じました。
しかし、SibeliusはFinaleと比べると値段が高いです。さらに付属されている音源が40GBとかなり重く、ソフトを入れるPCは高いスペックのほうが安定して使えます。
そういった点を踏まえるとSibeliusはFinaleと比べるとハードルが高いと言えるかもしれません。
Sibeliusの特徴
Sibeliusの開発元であるAvidはDAWソフトとして非常に有名な「Pro tools」を開発しています。そのためSibeliusの特筆する点としては、DAWソフトとの連携が非常に強いです。
また、商業音楽の収録現場にいるとSibeliusを使われている音楽家が多いです。音源納品を求められる商業音楽の現場ではDAWソフトとの連携が強いというのは非常に便利ですし、筆者もその利便性の高さを感じています。
後々にDAWソフトの購入を考えている方はSibeliusの購入をおすすめします。また、Sibeliusには楽譜をスキャンして取り込むという便利な機能も付いているということもおすすめポイントです。
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楽譜作成ソフトのおすすめ③Notion(ノーション)
このソフトは筆者が気になっている楽譜作成ソフトです。
筆者は音源作成の際のDAWソフトはStudio oneを使っており、NotionはStudio oneの開発元PreSonusが開発した楽譜作成ソフトです。
Studio oneには楽譜作成機能が付いておらず、Notionはその部分を補うためのソフトといった位置づけです。もちろん機能としてはDAWよりの設計となっており、Studio oneはもちろん、iPadとの連携も抜群です。
しかし、基本的な楽譜作成はできるものの、楽譜作成ソフトとしては発展途上でありFinaleやSibeliusほどの機能は無いと考えられます。
ですが、Studio oneユーザーも増えてきていることから、機能性におけるアップデートの需要も高まってくると考えられますので、これからの機能向上に注目です。
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楽譜作成ソフトのおすすめ④Dorico(ドリコ)
こちらの楽譜作成ソフトは開発元はDAWソフトのFinaleとも言うべきCubaseを開発したSteinbergです。また、Steinbergはヤマハの子会社ということもあり、日本語版への対応も非常に親切にやってくれるかと思いますし、今後の機能面の充実も大いに期待できます。
Notionに比べると楽譜作成ソフトとしての機能は充実しており、FinaleやSibeliusほどではなくとも、楽譜作成ソフトとして十分使えるでしょう。さらに、doricoは元Sibeliusのエンジニアによって新しく開発されたソフト故に、非常に軽く、インターフェースは軽快で洗練されています。
現段階では、Cubaseとの連携は特に無いようですが、Cubaseは日本国内のユーザー数は非常に多く、CubaseユーザーがDoricoを取り入れる可能性は高いでしょう。それ故に、操作や機能面での情報共有も高くなると考えられます。
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まとめ
ここまで、4つの楽譜作成ソフトを紹介してきましたが、まとめると・・・。
楽譜作成に特化したいなら超無難にFinale
楽譜作成以外にDAWソフト導入も検討しているならSibelius
Studio oneユーザーならNotion
Cubaseユーザー、もしくはヤマハを信頼しているならDorico
以上となります。
また、購入前に取り扱い楽器店に行き、実際に使い勝手を体験してみたり、無料体験版で実際に操作してみるのも良いかと思います。
楽譜・譜面作成ソフトは安い買い物ではありません。ご自身の今後の音楽活動なども踏まえて、じっくりと検討して購入することをおすすめ致します!