ノクターン(日本名で”夜想曲”)といえばショパン、というイメージをお持ちの方も多いかと思います。しかしノクターンってどんな曲を指すのか、そしてどういう意味があるのか?まではご存知でしょうか?
 
本記事ではノクターンのおすすめ演奏動画と無料楽譜紹介、また、ノクターンについての詳しい解説やセレナーデとの違いについてご紹介します。

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ショパン「ノクターン(夜想曲) 第2番 Op.9-2」

「ノクターン」といえばまず頭に浮かぶのがショパンです。彼は21曲もの夜想曲を作曲、それらは夜想曲集としてまとまって1冊の楽譜に収録されているものも多いです。
 
そのショパンのノクターンの中でも最も有名と言われるのがこの「ノクターン(夜想曲) 第2番 Op.9-2」で、ショパンのノクターンといえばほぼこの曲のこと、とも言えるほどに知られている曲です。「ノクターン」と言われてピンと来なくても曲を聴けば、多くの方がどこかで耳にしたことのある曲だと思います。
 
ゆったりとした3拍子の曲で、左手の伴奏は緩やかに変化してゆきます。右手の旋律と装飾部分が印象的ですね。このトリルやプラルトリラー(装飾音)をどう弾くか、というのはピアニストによって特徴があり楽しめるところです。
 
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ショパン「ノクターン 第20番 嬰ハ短調」

ショパンのノクターンの中で次に有名なのがこの「ノクターン第20番」ではないでしょうか。この曲は映画「戦場のピアニスト」のオープニングシーンでも使われています。
 
元々、ノクターン第20番には「アダージョ」という標題がついていたのですが、ブラームスが写譜する際に間違って消してしまい、速度を表す言葉の「Lento con gran espressione(レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ)」だけが残ったので、この言葉がタイトルとして知られるようになりました。
 
哀愁を帯びた美しい旋律が心を打ちますね。ショパンの夜想曲集は、ピアノを習っていた方であればご自身で弾いた、という方も多いと思います。
 
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ドビュッシー「ノクターン」

ドビュッシーもノクターンを作曲しています。ドビュッシーのノクターンは1897年から1899年にかけて作曲され、「雲」「祭」「シレーヌ」の3部からなる管弦楽の組曲です。
 
彼のノクターンはそのままフランス語で「ノクチュルヌ」と呼ばれることが多いです。
 
ドビュッシーがノクターンを作曲するより前に、ショパンがノクターンを作っていましたが、彼はアメリカの画家ホイッスラーの作品「青と銀色のノクターン」や「黒と金色のノクターン」と題された絵画から着想を得た、と語っており、ショパンのノクターンとの関連性はない、としています。
 
「雲」そして「祭」、ともに印象派の第一人者とも言われるドビュッシーらしく、情景がまるで目に浮かぶような曲ですね。ちなみにシレーヌとはギリシャ神話に登場するセイレーンのことです。
 
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リスト「愛の夢 3つのノクターン」

リストの代表曲の一つともいえる「愛の夢」。当初はソプラノの歌曲として作曲された作品で、1850年、リスト本人によってピアノ独奏版「愛の夢 -三つのノクターン」として編曲されました。
 
副題の通り三つの楽曲から構成されています。一般に「愛の夢」というと主に3番の曲を指し、この曲も、おそらく多くの方が耳にしたことがある有名な曲です。
 
第3番には「おお、愛しうる限り愛せ」という副題がついており、「O lieb so lang du lieben kannst(愛せるだけ愛しなさい)」という歌詞の冒頭は、恋愛のことではなく、もっと大きな愛、人間愛について歌われたものです。
 
愛の夢、というロマンチックなタイトルがついていて、さぞかし甘い恋の歌なのだろうと思われますが、実はそうではないのですね。
 
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ノクターン(夜想曲)って何?

ノクターンは、ソナタやワルツ等、形式による分類ではなく、作曲者が「ノクターン」とタイトルをつければノクターンになります。
 
つまり、ノクターン特有の形式はありません。一番最初に「ノクターン」というタイトルをつけたのはアイルランド出身の作曲家・ピアニストの、ジョン・フィールドです。それまでになかった彼の作風は、その後の作曲家に多大な影響を与えました。
 

夜

 
さて、ノクターンは日本語で「夜想曲」、フランス語では「ノクチュルヌ(nocturne)」と言います。語源はラテン語の「nocturnus」で、これは「夜の」という意味を持つ形容詞。つまりノクターンとは、夜を想う曲、夜を想って書かれた曲、ということになります。
 
ノクターンで有名な作曲家としてはまずショパンが挙げられるでしょう。彼は20歳のころより21曲ものノクターンを作曲しました。
 

ショパン

 
初期の彼のノクターンの作風は、ジョン・フィールドのノクターンの影響が色濃く表れていますが、曲数を経るにつれ、ショパン独自のノクターンが作られるようになり、後にフォーレなどロマン派の作曲家に影響を与えることとなります。
 
ショパンの他には、上記したフォーレ、そしてドビュッシー、リストらがノクターンの作曲者として有名です。
 

ノクターン(夜想曲)とセレナーデはどう違う?

日本語で「夜曲」、「小夜曲」とも呼ばれるセレナーデ。「夜」とつきますし、セレナーデと夜想曲(ノクターン)が同じだと思われる方も多いかもしれませんね。しかしセレナーデとノクターンは同じではありません。
 
セレナーデとは、「夜に演奏するのにぴったりの曲」あるいは「女性や恋人に対して愛を語るために窓の下で演奏する曲」という意味があります。
 
例えば有名なところではモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」などが挙げられるでしょう。この曲は小人数のサロンでゆったりと夜を過ごすための曲として作曲されています。
 
つまり、セレナーデは「夜に演奏するのにぴったりの曲」、ノクターンは「夜を想って作られた曲」ということになるでしょう。
 

夜のピアノ

 
しかし曲として最初に登場したのはセレナーデでした。さかのぼれば紀元前の古代ギリシアで、恋人のために扉の外で愛を語る歌がうたわれていました(このように歌われる歌は「扉の前で」というジャンルとして存在しました)。
 
また、バロック時代にはイタリア語の「セレナータ」という言葉が使われ、主に声楽と器楽による合奏形式で演奏されていました。
 
18世紀になり、ロマン派や古典派の作曲家によってセレナーデは作曲されていきます。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」はこの頃作曲されたものです。
 
ジョン・フィールドによってノクターンが作られたのは19世紀始めになりますから、歴史としてはセレナーデのほうがはるかに長いことになりますね。
 

まとめ

こちらではノクターン(夜想曲)について、そしてノクターンとセレナーデの違い、有名なノクターンについて解説しました。
 
ノクターンというとショパンのイメージですが実は色んな作曲家がノクターンを作っています。愛の夢がノクターンの一つだった、というのも初めて知った方は多いかもしれません。
 
気に入ったノクターンがあれば、ピアノ楽譜を買ってチャレンジしてみるのもいいかもしれませんね…!