ご当地グルメに、多くの文化遺産。そして、美しい瀬戸内海を臨む景勝地である広島には「広島交響楽団」があるのをご存知でしょうか?「文化対話賞(ユネスコ)」「広島市民賞」を受賞している、高い水準を持つプロオーケストラです。地元広島を中心とした中国地方はもちろんのこと、全国各地での公演や、海外公演も行っています。
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■「Music for Peace」被爆地広島から音楽で平和の願いと祈りを届ける
広島交響楽団の本拠地である広島市は被爆地であり、世界からも「平和の象徴」として知られています。国際平和文化都市のオーケストラとして「Music for Peace」をキャッチフレーズに、平和の願いと祈りを託した音楽を届けています。
広島の原爆忌にあたる毎年8月には、広島交響楽団によるコンサート「平和の夕べ」が開催されます。ここ数年は広島市との協力により、ホールのロビーに千羽鶴を折ったり、花の写真にメッセージを書き入れることが出来るコーナーも設けられています。歴史を繰り返さず未来の平和を願う、広島市と楽団の思いが感じられますね。
また2018年3月には、東京都墨田区にある、すみだトリフォニーホール開館20周年を記念し「すみだ平和記念コンサート」に招かれました。1945年3月10日の東京大空襲で、同ホールの建つ墨田区は大きな被害を受けました。同じく、大きな戦災を受けた都市として平和への祈りを音楽にのせて世界へと発信しました。
■2017年に就任した音楽総監督・下野竜也の魅力
2017年4月より、同交響楽団の音楽総監督を務めるのは下野竜也。霧島国際音楽祭やサイトウ・キネン・フェスティバルにも登場、国内外のオーケストラを指揮し、様々な舞台で目覚ましい活躍をしています。近年ではNHK大河ドラマのテーマ曲を指揮しており(NHK交響楽団)、「真田丸」ではカメオ出演も果たしました。
その他にも、広島交響楽団のYouTube「広響チャンネル」で、音楽総監督である彼の様々な姿を覗くことが出来ます。「総監督の小部屋から」というタイトルの動画では、各演奏会の曲目解説を彼自身から聞くことが出来ます。その他番外編では、赤い自転車に赤いユニフォームで広島市内を駆け抜ける姿、総監督としての新たな気持ちでのスタート、背番号00のユニフォーム姿で臨んだプロ野球始球式での舞台裏など、チャーミングな一面も。
『総監督の小部屋から』番外編〜下野、快走中
■広島東洋カープやサンフレッチェ広島とのジャンルを越えた交流
2016年9月10日、同交響楽団と同じく広島市を拠点とするプロ野球セ・リーグの広島東洋カープが25年ぶりにリーグ優勝を決めました。近年は「カープ女子」も増えてきており、リーグ優勝のニュースは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
この優勝を祝して、広島交響楽団も2017年1月に「やるぞ!カープシンフォニー」を、広島文化学園HBGホールで開催。チケットは全席完売!満員御礼の大盛況の公演となりました。
ゲストに広島東洋カープの緒方監督も駆けつけ、気持ちを1つに、一体となって演奏する楽団の姿は理想的だと仰いました。同じく、チームワークでリーグ優勝を勝ち取った選手達とも重なって見えたのかもしれませんね。
そして同じく、ゲストとして「THE CARP SYMPHONY」を作曲した宮崎道も登場。「それ行けカープ」の作曲者で、彼の父親である宮崎尚志(故人)とのエピソードなどを語りました。
モーツァルトの生誕250年の年の始球式で着用した、背番号250のユニフォームを身に纏ったマエストロ・秋山和慶。2008年の「ありがとう広島市民球場 – THE CARP SYMPHONY/広島交響楽団&広島東洋カープ・コラボレーションコンサート」以来の再演となった「THE CARP SYMPHONY」
そして「燃える赤ヘル僕らのカープ」、最後は塩見大治郎と南一誠もマイクを握り、会場全員で「それ行けカープ」の大合唱。
燃える赤ヘル僕らのカープ
ちなみに2017年シーズンも、広島東洋カープは2年連続となるリーグ優勝を決めました。これからも音楽×スポーツのコラボレーションで、広島を益々盛り上げてくれるはずです。
そして、もう一つの広島のプロスポーツチーム、サンフレッチェ広島とも地域活性化のための活動を行っています。広島交響楽団は広島3大プロ・コラボレーション活動「P3 HIROSHIMA」を、広島東洋カープ、そしてサンフレッチェ広島と共に行っています。P3とは「PRIDE(誇り)」「PASSION(情熱)「PROSPECTS(期待)」
広島が誇る、音楽とスポーツの分野の3大プロが力を結集。広島の方に「誇り・情熱・期待」を感じて貰えるような、コラボレーション活動を展開しています。地元広島の方へ、コンサートや試合への招待、音楽や体育の授業時間に小学校を訪問するなど、地域に根付いた音楽とスポーツの啓発活動を行っています。広島県民、市民の方にとっても、身近にプロの方と接する機会が多くあるのは素晴らしいことでしょう。
■ミッシャ・マイスキーや同団の平和音楽大使も務めるマルタ・アルゲリッチもソリストとして共演
これまでに国内外の素晴らしい演奏家達が、広島交響楽団と共演しています。
2013年の同団創立50周年記念定期には、世界的なチェリストであるミッシャ・マイスキーがソリストとして登場。そして、被爆から70年の年に あたる2015年8月には、現代最高のピアニストの1人であるマルタ・アルゲリッチをソリストに迎え「平和の夕べ」を開催。広島と東京の2カ所とも満席御礼、東京・サントリーホールの公演には天皇皇后両陛下も御臨席され、アルゲリッチとの共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲が演奏されました。
HIROSHIMA SYMPHONY ORCHESTRA =LIVE= Beethoven:Piano Concerto No.1-3mov.(Encore)
■平和の街ヒロシマから文化と平和を伝え続けるオーケストラ
「広島」と「平和」というキーワードには、切っても切れない強い結び付きがあります。70年前の出来事を風化させず、二度と悲劇を繰り返さない、広島交響楽団はそのような人々の願いを、これからも「音楽」を通して伝え続けていくでしょう。本拠地である広島にはもちろん、国内外各地に平和と未来への希望が込められた美しいハーモニーが届きますように。