どこか懐かしさを感じるメロディとして親しまれている「家路」は、誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。ドヴォルザークは一度聴いたらハマってしまうような魅力的な音楽をいくつも作曲しています。

本記事では、そんな彼の代表曲とも言える名曲の数々と、聴きどころについて参考動画と共に解説!ドヴォルザークの魅力を再発見できる旅へお連れします。

案内人

  • 林和香東京都出身。某楽譜出版社で働く編集者。
    3歳からクラシックピアノ、15歳から声楽を始める。国立音楽大学(歌曲ソリストコース)卒業、二期会オペラ研修所本科修了、桐朋学園大学大学院(歌曲)修了。

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スメタナと並んでチェコを代表する作曲家となったドヴォルザーク

出典:Wikimedia Commons

ドヴォルザークは後期ロマン派に属するチェコの作曲家です。チェコ国民音楽の父といわれるスメタナよりも一世代若く、チェコの音楽を築きあげました。

52歳から数年間はアメリカに渡り、ニューヨークのナショナル音楽院の院長を務めますが、その後帰郷。ドヴォルザークは生涯にわたり故郷チェコの音楽を重視した国民楽派でした。

そんなドヴォルザークの名曲を、管弦楽曲・室内楽曲、交響曲、その他のジャンルに分けてそれぞれ解説していきます。

なお、ドヴォルザークの人柄や生涯についは下記記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。

管弦楽曲・室内楽曲編

印象的で美しいメロディを深く味わえるのが管弦楽曲であり、ドヴォルザークの魅力にたっぷりと浸ることができるジャンルと言えるでしょう。ここでは定番の3曲をご紹介します。

スラヴ舞曲集/Slavonic Dances


オーケストラのレパートリーとしてとても人気の高い作品。元はピアノ連弾として書かれた曲ですが、発表時から好評を博し、ドヴォルザーク自身により管弦楽版に編曲されました。

短い舞曲16曲が第一集と第二集に分かれています。チェコやスラヴ地方の舞曲が各曲のテーマとなっていて、ダンスを想像させるように音やリズムが生き生きと描かれているのが特徴です。民謡調で濃厚な響きが体験できるでしょう。

弦楽四重奏曲 第12番「アメリカ」/String Quartet No.12, Op. 96 “American”


代表曲のひとつに数えられる人気の高い作品で、アメリカ滞在中の1893年に書かれました。現地で黒人霊歌や先住民の音楽に触れたことが大きな影響となり、そのエッセンスを創作に含めていきます。

あたたかな空気を纏うメロディや、心地よく美しい響きが随所に鏤められており、とくに華やかで楽しい第4楽章は必聴です。

チェロ協奏曲 ロ短調/Cello Concerto Op.104


最盛期の傑作として世界中で愛されている作品であり、ドヴォルザークの音楽の頂点と言えるでしょう。

アメリカから祖国チェコへの帰国直前に書かれた曲で、あちこちに登場する美しく艶やかなチェロのメロディが魅力です。チェロとダイナミックなオーケストラが織りなす響きは抒情性に満ち溢れています。

交響曲編

ドヴォルザークといえば交響曲第9番が特に有名ですが、傑作はまだまだあります。一度は聴いておきたい3つの交響曲をご紹介します。

交響曲第9番 『新世界より』/Symphony No.9 ”From the New World”


ドヴォルザークの最も有名な作品であり、彼の最後の交響曲でもあります。ニューヨークのナショナル音楽院の院長を務めていた1893年に作曲されました。

「新世界」とはアメリカを指していて、祖国チェコへの郷愁の想いを込めながら書き上げた名作です。魅力的なメロディがたくさん現れますが、特に第2楽章に登場するメロディは「家路」というタイトルで親しまれています。

交響曲 第 8 番/Symphony No.8


知名度では交響曲第9番には及びませんが、人気の高い代表曲のひとつです。

1889年の夏、ボヘミアの村で過ごす間に作曲されました。自然の風景に触発されてそのまま音を描いたかのような、素朴さ、壮大さ、明るさ、穏やかさが共存した音楽です。息の長い旋律が美しく、特に第3楽章のノスタルジックなメロディには心が揺さぶられます。

序曲「謝肉祭」/Carnival Overture Op.92


アメリカに向かう直前の時期に書かれた3つの序曲「自然と人生と愛」の中の一曲で、国際的な名声が上がっていく成熟期に書かれた傑作です。

謝肉祭の活気や熱狂が表現された音楽で、冒頭から一気に引き込まれてしまいます。お祭りの雰囲気を高めていく打楽器の活躍にも注目です。

その他

ドヴォルザークの傑作はピアノ曲や声楽にもあります。さらに魅力を発見できる必聴の3曲をご紹介します。

ユーモレスク 第7番/Humoresque No.7


1894年に作曲されたピアノ曲集「ユーモレスク集」の一曲。この頃のドヴォルザークはニューヨークを本拠として、新天地で多くの刺激を受けながら音楽を書き溜めていました。

1894年夏のボヘミア滞在中、その音楽の断片をもとに小品集としてまとめられたのがユーモレスク集です。「ユーモレスク」は気まぐれに自由な形式で書かれた曲という意味を表します(英語では「ユーモア」)。第7番は民謡的でどこか懐かしさを感じさせるメロディが特徴です。

我が母の教えたまいし歌/Když mne stará matka


チェコの詩人アドルフ・ヘイドゥクの詩を用いた「ジプシー歌曲集」の中の一曲です。原詩はチェコ語ですが、ドヴォルザーク自身によってドイツ語の歌詞も付けられています。

母の存在に思いを馳せ、今では我が子を想う親子の繋がりを歌い上げます。愛情が凝縮された歌詞と、深みのある音楽で表現される至高の作品です。

月に寄せる歌 オペラ「ルサルカ」より/Rusalka: Měsíčku na nebi hlubokém


ドヴォルザークはオペラを11作残していますが、唯一広く知られている作品が「ルサルカ」です。チェコ語という事情もありオペラの上演は多くないものの、アリアのみで演奏されることの多い人気の曲と言えます。

「月に寄せる歌」は水の精ルサルカが歌うアリアで、人間の王子に恋をしたため人間になりたいと月に願うシーンです。ロマンティックな歌詞が幻想的な音楽で表現されています。

まとめ

9つの作品を取り上げましたが、あなたの印象に残る音楽は見つかりましたか?

コンサートのレパートリーとして愛されている作品も多いため、実際に聴ける機会もあるでしょう。名盤の聴き比べにもぜひ挑戦してみてくださいね。