子供がピアノ教室へ通い始めてしばらくすると「発表会に出ませんか?」とお誘いがきますよね。
出演するとなると、最も重要なのが選曲です。しかし、「何から選べばいいの?」「選曲で注意するべきことは?」など悩んでいる親御さんは少なくありません。
そこで今回は、3~5歳の子供向けの曲を選ぶポイントやおすすめ曲について、ピアノ講師が詳しく解説します。晴れの舞台にぴったりな一曲を見つけてくださいね。
案内人
- 海老野みほ4歳からエレクトーンを始め、高校生の時にピアノに転向。
音楽系専門学校に進学し、クラシック・ジャズ・POPs・作曲・アレンジなど、様々なジャンルの知識を身につけながら演奏活動を行う。
2011年から都内の音楽スクールのピアノ講師として勤務。
幼児のピアノ発表会の曲選びポイントとは?
発表会の選曲では「できれば子供の好きな曲にしてあげたい」と思いますよね。ですが実際には、好きな曲=弾ける曲ではないのが悩みどころ。
子供も喜ぶ曲で、なおかつ本番で失敗しにくい難易度、そして演奏レベルに合った楽譜を探すのは一苦労です。そんな悩める親御さんのために、次項からは曲を選ぶ際のポイントを年齢別に解説しますのでぜひ参考にしてくださいね。
年少クラス(3歳)の場合
まずは年少クラス、3歳から。このくらいの年齢だと、発表会は初めてという子も多いでしょう。初めての発表会は「できた!」という成功体験で終わらせてあげたいものです。
そんな3歳の選曲のポイントは2つ。
- いつも歌っている曲
- 普段の練習で気に入って弾いている曲
演奏のレベルとしては、左右の手でメロディと伴奏を同時に弾くのがまだ難しいはず。楽譜は左右の弾くタイミングがズレているものにするといいでしょう。
先生に伴奏を弾いてもらう連弾方式もおすすめです。右手だけの演奏でも、最後までやりきれば達成感を得て次への意欲につなげてくれますよ。
年中クラス(4歳)の場合
4歳というのは、周囲の評価を気にし始める年齢です。「人前で失敗すると恥ずかしい」という感情が芽生える時期なので、発表会に参加するかどうかは本人の意思を尊重してあげてください。
選曲のポイントは、ルールにもよりますが、短い曲を2~3曲組み合わせるということ。
長い曲だと途中で集中力を欠いたり、ミスからのリカバリー(再スタート)が難しくなったりします。その点、1分ほどの曲を2~3曲選んであげると、練習中に気持ちを切り替えやすいですし、リカバリーもしやすいのです。
また、4歳になると両手でメロディと伴奏を分けての演奏ができるようにもなります。楽譜を選ぶ際は、左手の音の数を目安にするのがおすすめです。
年長クラス(5~6歳)の場合
5~6歳は、ピアノを始めた時期や練習の頻度によって、レベルのばらつきが大きくなる時期です。
ただし「同い年のあの子はあんなに難しいのを弾いているのにうちの子は…」なんてことは思わないようにしましょう。それよりも、子供の性格やレベルに合った、楽しんで演奏できる曲を一緒に選ぶことが大切です。
この時期の選曲のポイントは、本番の目標を立てて、それに合った曲を選ぶこと。目標は高いものではなく、当日が楽しみになるようなものを設定しましょう。
例)
曲にマッチしたストーリーを考えながら演奏を完成させよう
→ストーリー性のあるクラシックを選曲
リズム表現をひとつレベルアップさせよう
→ちょっと複雑なリズムが出てくるポップスを選曲
おじいちゃん、おばあちゃんに褒められる演奏をしよう
→おじいちゃん、おばあちゃんが知っていそうなクラシックの有名曲を選ぶ
とにかく楽しんで、笑顔で演奏しよう
→子供の好きなアニメやディズニーの曲から選ぶ
目標は親子で共有するのも大事です。練習に意味を持たせることができ、発表会へのモチベーションを高められますよ。
幼児向けのピアノ発表会の曲選びでよくある失敗談
次に、曲選びでよくある失敗談を紹介します。失敗すると子供との仲が悪くなってしまう可能性もあるため、次のような事態には注意してください。
子供にあった楽譜が見つからない
「子供の好きな曲を弾かせてあげたい」と、選曲は子供にお任せ。曲が決まり、いざ楽譜を探してみると、初心者向けではあるものの子供の手ではムリな押さえ方が出てきたり、ペダルを使った複雑な奏法で書かれていたり…。なかなか子供に弾ける楽譜が見つからず、結局選曲し直しになったことがありました。
「好きな曲を弾かせてあげたい」という気持ちは素敵です。ただ、時間や労力をムダにしないために、あらかじめ楽譜がある候補曲を5つくらい用意して、その中から本人に選んでもらうようにしましょう。
レベルに合っていない曲を選んでしまう
せっかくの発表会だからと、先生の反対を押し切ってクラシックの有名曲を選びました。冒頭はなんとか弾けるようになりましたが、練習時間が足りず、曲の最後までは弾けない状況になってしまいました。結局、中間部分を全てカット。なんとか終えられたものの不完全燃焼で、子供に申し訳なくなりました。
こういう失敗があると、お子さんは今後ピアノに触れたくなくなるかもしれません。本末転倒な結末にならないよう、演奏レベルに合った選曲は大切です。
早い時期から発表会の曲に集中しすぎる
初めての発表会ということで、張り切って半年前から練習を開始。レッスン時間のすべてを発表会の曲の練習に費やしました。2ヶ月ほどである程度通して弾けるようになって安心していたところ、3ヶ月もすると子供が飽きてしまい……。他の曲で気分転換をさせてみましたが、発表会の曲に対する新鮮味や集中力が薄れてしまい、当日は身の入らない発表会になってしまいました。
長期に渡って一つのことに取り組むのは、大人でもしんどいものです。子供であればなおさらなので、
3~4ヶ月前:候補をいくつか練習して曲を絞る
2ヶ月前:発表曲を決めて本格的に練習する
1ヶ月前:曲の仕上げ、本番を想定した練習をする
など、当日に状態のピークを持って来れるよう計画を立てておきましょう。レベルやモチベーションなどに個人差があるため、本人や先生とよく相談してくださいね。
幼児のピアノ発表会におすすめのポップス5選!
ここからは、おすすめのポップス曲を紹介します。選曲理由や楽譜もピックアップしているので、ぜひ参考にしてみてください。
ミッキーマウスマーチ
・おすすめ理由
誰もが聞いたことのあるメロディで、馴染みがある分すぐに練習へとりかかれるのが魅力。明るくて聴き映えのする、発表会でも大人気の曲です。年少さんはメロディだけを演奏するのもいいですよ。
・演奏のポイント
指の動きが少なく、ピアノを始めたばかりでも弾きやすいです。また、音を切って弾いても問題ないため、スムーズに指が動かなくても大丈夫。8分の6拍子ですが、難しいリズムは出てこないので安心してください。
ハイホー
・おすすめ理由
こちらもディズニーの人気曲です。前述の『ミッキーマウスマーチ』よりも音に動きがあるため、レベルが少しだけ上がるものの、右手だけでもかっこよく弾けるのが魅力。ミッキーマウスマーチが簡単すぎると感じるのであれば、こちらがおすすめです。
・演奏のポイント
歯切れ良い音のニュアンスが演奏の肝になってきます。スラーとスタッカートをよく練習しましょう。大人が少し大袈裟に弾いてみせて、子供に真似してもらう練習方法も効果的ですよ。
さんぽ
・おすすめ理由
映画『となりのトトロ』でおなじみの一曲で、元気よく楽しく演奏できます。ただ、曲が長く集中力を保つのが難しいかもしれないため、年長さんのチャレンジ曲としてみてはいかがでしょうか。
・演奏のポイント
メロディに出てくる”ハネ”のリズム(ターカターカのリズム)を弾く際に、テンポを乱さないよう意識しましょう。16分音符はしっかり弾きすぎず、触る程度にするとうまくいきます。
パプリカ
・おすすめ理由
最近の曲で、かつ人気もあるということで、幅広いレベルの楽譜が流通しています。子供に合ったものを見つけやすく、練習に取り組みやすい曲です。演奏時間が長めなので、年中さんや年長さんにおすすめです。
・演奏のポイント
Bメロで和音が連続した後、サビでは8分音符のリズムへと変化します。ここでテンポを崩さないよう、メトロノームを使いながら反復練習しましょう。
にじ
・おすすめ理由
ゆったり、やさしい雰囲気の音楽が好きな子には、この曲がおすすめです。テンポが早くなく、左手も弾きやすいので、両手を始めたばかりの子でも弾きやすい一曲になっています。
・演奏のポイント
メロディで同じ音が2回続く箇所がたくさんでてきます。うまく弾けないときは、指をしっかりと上まで上げることを意識しましょう。鍵盤が上がりきっていないために失敗するのはあるあるです。
童謡・クラシックおすすめ曲5選!
次に、童謡やクラシックのおすすめ曲を紹介します。
おもちゃのチャチャチャ
・おすすめ理由
だれもが知っている童謡で、子供の発表会での人気曲です。テンポやリズムがとりやすく、年少~年中さんにおすすめです。
・演奏のポイント
同じ音の連打が多いので、手首を使って弾く練習をしましょう。木琴を叩くようなイメージで弾くとスムーズにできると思いますよ。
きらきら星
・おすすめ理由
保育園や幼稚園でもよく歌われているので、すでに曲を覚えている子も多いのではないでしょうか。冒頭が少し難しいものの、小さな手でも弾きやすいのも良いところ。
・演奏のポイント
冒頭部分で手を少し開いた形にする必要があり、ここが本曲最大の難所です。指使いを確認しながら、手の開きや指の移動を細かくチェックしてあげてください。
ピアノを始めたばかりの頃は手が開きにくいので、ストレッチをしてあげましょう。「手をパーにしてしっかり指先を伸ばす→手を軽くグーにする」。これを数回するだけでも効果がありますよ。
メヌエット ト長調 BWV.Anh.114・・・バッハ
・おすすめ理由
指先のコントロールや音の切り方といった、クラシックの基本を学べる一曲。年長さん(5歳)で本格的なクラシックを弾いてみたい子におすすめです。曲の知名度も高く耳馴染みがあるので、親御さんも一緒に練習できますよ。
・演奏のポイント
右手・左手がそれぞれ別フレーズになっているため、片手ずつの練習から始めましょう。スラーの切れ目を意識してブレスをとるようにすると、自然に抑揚がつけられて上級に一歩近づいた仕上がりになります。トリルを入れるのが難しい場合、これを省略することもできるので、先生と相談してみましょう。
さあ、ワルツをおどろう ギロック
・おすすめ理由
年少さん(3歳)でも弾きやすいギロックの曲は、子供の発表会の定番です。年中さん・年長さんは2・3曲組み合わせて演奏するのがおすすめ。かわいらしい曲が多く、子供と一緒に楽しんで選曲できます。
・演奏のポイント
左手が主役になる箇所が多いため、左手が弱い音にならないように注意してください。黒鍵もよく出てくるため、指の腹でしっかりと鍵盤を押せるよう、指の動きも練習しましょう。
かわいい舞曲 グルリット
・おすすめ理由
両手弾きを始めたばかりでも取り組みやすい、おすすめの一曲。時間は1~2分と長めですが、繰り返しが多く動きの変化も少ないため、年中さんぐらいにぴったりです。可愛らしい曲調から、特に女の子の人気が高いです。
・演奏のポイント
3拍子なので、焦らずテンポをしっかりキープするのがポイントです。曲を通して弾けるようになったら、メトロノームに合わせて練習してみましょう。メロディを覚えにくいと感じたら、音名で歌ってから練習に入るとスムーズに弾けるようになります。
まとめ
本記事では幼児のピアノ発表会におすすめの曲を紹介しました。
本記事を参考にしながら、お子様にぴったりな一曲を見つけてみてくださいね!思い出に残る発表会になることを心より祈っています。