吹奏楽やオーケストラで活躍するトロンボーンにはさまざまなメーカーがあり、値段もそれぞれ変わってきます。

ですが、その楽器のほとんどは都市部の限られた楽器店でしか目にすることができません。
自分の楽器を購入したいけど、そもそもどんなメーカーがあってどれくらいの値段なのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?

この記事ではプロ奏者である筆者が、トロンボーンの値段のしくみから、知っておくべきメーカーごとの相場や特徴について解説します。

トロンボーンの値段は何で決まる?

お手頃なスチューデントモデルからプロ仕様の高級モデルまで、幅広い値段のトロンボーンがあります。

とくに影響の大きい要素は以下の3つです。

バルブの種類

まずトロンボーンの値段を左右するのは、バルブの種類です。
スタンダードなロータリーバルブが最も安く、ハグマンバルブ、セイヤーバルブやアキシャルフローバルブ、といった順に値段が上がっていきます。

ロータリーバルブ▼

ハグマンバルブ▼

アキシャルフローバルブ▼

もちろんバルブごとに長所と短所があるので、値段ではなく自分との相性で選びましょう。

国産と外国産

多くのトロンボーンは海外で作られたものなので、日本に運ぶための輸送コストが値段に含まれて高くなります。
さらに楽器職人の人件費なども変わってくるため、輸入楽器でも原産国によって価格はさまざまです。ちなみに国産のトロンボーンでは、ヤマハがシェアの大半を占めています。

ハンドメイドと量産モデル

トロンボーンには2種類のモデルがありそれぞれ値段も違います。

  • 職人が全工程で手間をかけて作ったフルハンドメイドモデル
  • 工場で大量に部品を生産され組み立てられた量産モデル

職人が時間をかけたハンドメイドは洗練された音色の楽器になりやすいのですが、流通が少ないうえに個体差が大きいので、なかなか良い楽器には巡り合えないでしょう。
自分に合った楽器を見つけるには根気と時間が必要です。

一方で量産モデルは値段が安く、数本のまったく同じ楽器の中から特に良いものを選ぶことができます。
そもそも個体差が小さい楽器がほとんどなので、選ぶのにそう時間はかからないでしょう。故障時のケアや部品の交換がしやすいのも特徴です。

トロンボーンの有名メーカーと種類ごとの相場

数あるトロンボーンの中でもとくに人気のあるメーカーとモデルについて解説していきます。

記載しているモデルはメーカーごとの売れ筋商品であり、筆者が購入の相談を受けたとしたらまずおすすめする楽器です。
どれも素晴らしい楽器なので、購入の際には参考にしてみて下さい。

YAMAHA(ヤマハ)

YSL-640
¥258,500(税込)

YSL-882O
¥401,500(税込)

国産の管楽器メーカーとして根強い人気を得ているヤマハ。
はっきりとした明るい音色で反応がよく、音程のクセもないのでとにかく扱いやすい楽器です。ヤマハのお店は全国に多数ありますから、修理や調整などのケアをしやすいのも嬉しいポイント。YSL640は多くのスクールバンドで使われている定番モデルです。YSL-882Oはオープンラップで更に伸びやかな音が期待できます。

Vincent Bach

42B GL
¥41,5000(税抜)

42BO GL
¥41,5000(税抜)

Vincent Bachはアメリカ生まれのメーカーです。
トランペットとトロンボーンの両方において高い人気があり、国内外のたくさんのプレイヤーに愛されています。

あたたかく深みのある音色は、まさにクラシックトロンボーンのスタンダード。Bachのラインナップにはハグマンやアキシャルフローなど各種バルブのモデルがありますが、まずはロータリーバルブの42BシリーズでBachの伝統的な音を体験してみてください。

Getzen

1047FY
¥451,000(税込)

3047AFY
¥627,000(税込)

Getzen(ゲッツェン)もアメリカ生まれのメーカーです。
『金管楽器ならゲッツェン』の理念を掲げ、高い完成度による操作性とパワフルなサウンドで多くのプロ奏者に選ばれています。

おすすめしたいのはアキシャルフローバルブを備えた3047AFモデル。バルブ使用時の抵抗感は不使用時とほぼ同じで、とくに低音域は快適に演奏できます。個体差もほぼないので、良い楽器がすぐに見つかるでしょう。

Antoine Courtois

AC420B
¥489,500(税込)

AC420BH
¥709,500(税込)

Courtois(クルトワ)はフランス産のトロンボーンで、色鮮やかで艶のある音色が特徴です。
ベルやスライドのタイプを細かくカスタムできることから、プロのトロンボーン界にもこだわりを持ってクルトワを使用する奏者が多くいます。

流通は少ない楽器ですが、販売元のビュッフェ・クランポンのケアがしっかりしているので、納得いくまで試奏して選ぶことができます。

Thein

Belcanto-TY
¥1,188,000(税込)

ドイツのトロンボーンメーカーThein (タイン)。『マイスター』と呼ばれる職人が時間と手間をかけて1本ずつ作り上げたそのトロンボーンは、まさに芸術品と言えます。
ベルカントモデルのもつ音のキメの細かさや音の伸びは、プロ奏者から見てもやはり格別です。

ドイツのフルハンドメイドモデルということでさすがに値が張りますが、こだわり抜かれたトロンボーンの完成度は値段以上の価値があります。

プロ奏者直伝!失敗しないトロンボーンの選び方

トロンボーンは大きな買い物です。また、あなたと一緒に演奏を楽しむパートナーでもあるので、自分に合ったものを確実に選びたいですよね!

ここからは、失敗しないトロンボーンの選び方についてご紹介します。プロのトロンボーン奏者である筆者のアドバイスをぜひ参考にしてくださいね。

試奏してから買おう

楽器を購入する時は、かならず試奏してください。

「この楽器はこういう音」という傾向はもちろんありますが、あなたが吹いた時にどんな音が出るかは誰にもわかりません。
吹きやすさ以外にも持ちやすさや重さなど、吹いてみないとわからない事がたくさんあります。

購入するしないに関わらず、楽器店の方は快く対応してくれますので、遠慮なく試奏をお願いしましょう。

プロ奏者と一緒に選ぼう

実はこんな楽器の購入方法があるのをご存知でしょうか?

それは、楽器店でプロ奏者を紹介してもらい、その方に購入のアドバイスをしてもらうという方法です(稀に対応していない楽器店もあります)。

予算やメーカーの希望、出したい音のイメージから、あなたに本当に合っている楽器を提案してもらえるので、可能であればプロ奏者と一緒に試奏して決めるのがベスト。同じモデルの中から個体値のいいものを探す、というのもプロ奏者なら可能です。

ちなみにほとんどの楽器店はプロ奏者に紹介料や選定料といった報酬を支払うので、楽器を買う人からプロ奏者への謝礼は必要ありません。
まずは楽器店に相談してみて下さいね。

プロの選定品も狙い目

大きな楽器店には『〇〇交響楽団 △△氏選定品』といった表示がされている楽器があります。
これはプロ奏者が楽器店の依頼を受けて事前に選定した、良い楽器であることの保証のようなもの。吹きやすい楽器であることが多いので、見かけたら試してみるといいでしょう。

まとめ

高いものからリーズナブルなものまで、トロンボーンにはさまざまな値段の楽器があります。高価な楽器にはそれだけの手間や技術が詰まっていますし、購入しやすい楽器にもモデルひとつひとつに違った良さがあるのがわかりましたね。

楽器の購入を考えている人もそうでない人も、トロンボーンの値段とそれぞれの特徴を調べてみると、トロンボーンの新しい魅力や奥深さに気がつくはずです。

気になる楽器が見つかったら、ぜひ楽器店に足を運んで吹いてみてくださいね。