本物のピアノが欲しいけど、新品は高すぎて買えない…。という方におすすめなのが中古ピアノ。新品と比べ手頃な価格で人気ですが、実は選び方を間違えて失敗してしまった!というケースも少なくありません。

そこで今回は、調律師である筆者が中古ピアノ選びで失敗しないポイントをお教えします。実際の失敗例や選ぶ際に注目するべき部分も詳しくご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

案内人

  • おばたおりえピアノ調律師。大阪府出身。
    大学卒業後、専門学校にて調律・修理・整調・塗装・オーバーホールを学ぶ。
    卒業後、ピアノ調律会社にて工房勤務経験を経て現在フリーの調律師として活動中。

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そもそも中古でも本物のピアノを買うべき?

ピアノの先生に「中古でも本物のピアノを」と勧められたけど、本当に本物のピアノを買うべきなの?電子ピアノでもいいんじゃないの?そんな風にお悩みの方も多いですよね

結論から言うと、本物のピアノが断然おすすめです!

なぜなら、音の響きや表現力、タッチ感が電子ピアノより本物のピアノの方が優れているからです。これからピアノを始める人や、本格的なレッスンを受ける人は、ぜひ繊細な表現の違いを再現できる本物のピアノを選びましょう。

中古ピアノであれば電子ピアノの上位機種と同じくらいの価格帯から手に入るものもあるため、価格を抑えて本物のピアノを手に入れたい方にうってつけです。

しかし、住環境やライフスタイルなどの条件によっては電子ピアノの方が合っているケースもあります。
例えば、ピアノを置くスペースがない、マンションなどで音が出せない、賃貸でピアノの設置を禁止されている、というような場合であれば電子ピアノが向いています。

また、毎年の調律など定期的なメンテナンスに手間や費用をかけたくないという方も電子ピアノを選ぶ方がよいでしょう。

中古ピアノでも良い音で気持ちよく弾ける!

中古ピアノは新品よりも安価で手に入る点がメリットですが、一方でこのような不安も。

  • 品質が悪くてすぐ故障しそう
  • 音が悪い
  • メンテナンスが大変そう
  • 前のオーナーのクセがついてそう  …etc

実は、上記のような問題のほとんどはピアノの整備不良が原因です。消耗部品の交換や内部の調整を行なっていればこういったトラブルは起こりにくくなります。

つまり、既にきっちりと整備された中古ピアノを選べば中古ピアノでも新品のピアノのように気持ち良く演奏できるのです。

中古ピアノ購入の失敗エピソード

ここからは実際に中古ピアノを購入したユーザーの失敗エピソードを紹介します。

ピアノの整備がきちんとされていなかった

一番多いのが「整備がきちんとされておらず、購入後に修理が必要になった」というケース。

<30代 女性>
届いた中古ピアノは、見た目はさほど古く感じませんでした。安く買えたのでこれは当たりだったのかもと思った矢先、音が想像していたものと違ってびっくり。弾きたかった曲の仕上がりが全然変わってしまいました。また響きが悪いので、ハンマーが劣化しているのかもしれないと、お世話になっている調律師さんに相談。結局消耗品をいくつか変えて高く付きました。

<30代 女性>
見かけが気に入って購入しました。
ピアノはオーバーホールはされておらず、現状のまま購入ということで、調律の方に来てもらうと、フェルトが薄くなっていて鍵盤の重さがそれぞれ違うとのことで、フェルトを鍵盤分変えました。とてもお金がかかりました。

中古ピアノ購入の失敗エピソードをもっと詳しく知りたい方はこちら▼

中古ピアノは店舗で実際に試弾してみよう

中古ピアノはインターネット通販やオークションなどでも手に入りますが、実物を見ないまま購入するのはとても危険です。できるだけ店舗で試弾して決めることをおすすめします。

ネット購入はおすすめできない理由

実物を見ずに購入する最大のリスクは「ピアノの状態がわからない」ということです。

ピアノは置かれていた環境やメンテナンスの有無で状態が大きく変化する楽器です。全く同じメーカー・機種のピアノでも状態によって弾き心地も音色も異なります。

実際に試弾をしなければ、音の良し悪しやタッチの違和感、鍵盤や内部のトラブルなどに気づくことができません。

店舗選びのポイント

では、具体的にどのような店舗を選べばよいのでしょうか?販売店を選ぶ際のポイントは3つ。

1つ目は、取り扱い台数の多い店舗を選ぶことです。
先ほどご説明したとおり、同じ機種のピアノでも音色や弾き心地は1台ごとに微妙に違います。なるべく沢山のピアノを取り扱っている店舗で弾き比べをして、自分に合うピアノを見つけましょう。

2つ目は、信頼できる調律師や販売員がいることです。
中古ピアノ選びにおいてピアノの状態を見極めることはとても大切です。しかし、外見以外の部分は自分では判断がつきません。そこで重要なのが、信頼できる調律師や販売員のいる店舗を選ぶことです。

知識の豊富なスタッフのいる店舗であれば、内部の整備箇所や現在の状態、今後のメンテナンスについての説明を受けることができます。

3つ目は、アフターサポートが充実していることです。
ピアノは設置する環境によって状態が変わる楽器です。購入時は調子が良くても、半年・1年と経過した時にピアノに不具合が出る場合もあります。

購入時に保証がついているなど、アフターサービスが充実した店舗で購入すれば、すぐに相談できて安心です。

中古ピアノ選びで失敗しないためのポイント

新品と比べてリーズナブルとはいえ、やはり大きな買い物ですので失敗は避けたいですよね。
ここでは中古ピアノ選びで失敗しないためのポイントを4つご紹介します。

価格だけで選ばない

中古ピアノは価格帯の幅が広く、同じ機種でも値段にばらつきがあります。しかし、安いというだけで選んでしまうのはとても危険です。中古ピアノの中には、前オーナーの売却時からほとんど整備されていないものもあれば、外装を磨き上げ、全ての消耗部品を交換して新品ピアノと遜色ない状態まで整えてあるものもあります。

ネット販売などで見かける極端に平均価格より安いピアノは、必要な修理や整備に掛かる費用を削って販売価格を抑えている場合もあります。中古ピアノを選ぶ際は価格だけでなく、価格に見合う状態であるか確認することが大切です。気になるメーカーや機種があれば、事前に大体の価格帯を調べて予算を決めておくとよいでしょう。

必ず試弾して決める

店頭でピアノを選ぶ際、「あまり弾けないから」と試奏をためらうことはありませんか?人前でピアノを弾くのは試し弾きでも緊張してしまいますよね。しかし、特別な曲を弾けなくても大丈夫ですので、まずは自分で試奏してみましょう!

新品よりも個体差が大きい中古ピアノは、音やタッチ感も一台ごとに異なります。実際に弾き比べてみると、その違いや自分の好みも分かってくるものです。ぜひ沢山のピアノを弾き比べてみてください。

それに、ピアノは寿命の長い楽器です。一度買うと買い換える機会も少なく、一台のピアノと長く向き合うことになります。実際に触れてみてピンと来るものに出会えるまでじっくりと検討することをおすすめします。

疑問点を質問する

良いピアノを選ぶためには、自分ではわからない内部のことについて販売員や調律師に聞くことがとても大切です。

特に、修理や調整を行った箇所があるか、次に修理が必要なタイミングがいつになるかということは必ず確認しましょう。しっかりとした返答や状態の説明をしてくれない店舗での購入は避けるのがベターです。

消音ユニットなどの電子部品に注意

消音ユニットや自動演奏機能など、電子部品が付いている中古ピアノは特に注意が必要です。

ピアノ自体の寿命は何十年と長いのですが、消音ユニットや自動演奏機能は電化製品なのでそうもいきません。電子部品の耐用年数は大体10年〜15年程度ですので、中古ピアノの場合案外早く寿命を迎えてしまう可能性があります。

また、消音ユニットの性能は年々進化しています。中古の旧式のモデルと比べ、音質や演奏感が格段に良くなっています。消音ユニット付きの中古ピアノではなく初めからついていないピアノを購入して後付けをするのも良いでしょう。

ここを見て!中古ピアノのチェックポイント

ここからは、実際に中古ピアノのどこに注目して選べば良いのかを調律師である筆者が部分別に詳しくお教えします。ぜひ参考にしてみてくださいね。

品番・製造番号

ピアノには一台ごとに品番と製造番号が印字されています。これはピアノの戸籍のようなもの。これによってどの年代に作られたピアノか、どんな部品を使用しているかということが分かります。品番や製造番号が消されているピアノはメーカーや製造年代を偽っている可能性があるため、絶対に避けましょう。

外装

まず、外装に目立つホコリや錆び、細かな傷がないかチェックしましょう。信頼できる販売店であれば外装を磨いて細かな傷を消したり、錆びが出ないよう定期的にメンテナンスしています。

響板

ピアノの背中側にある板が、音を増幅させる役割を持っている響板です。これによりピアノは大きく豊かな音を出すことができます。木材の経年変化により割れが生じて雑音が発生する場合があるので、背面を見ることができる場合は大きな割れがないかチェックしましょう。

鍵盤

鍵盤の高さや沈み方に目立つようなばらつきがあるピアノは整備が行き届いていません。また、弾いたときに気になるくらい鍵盤がカタカタと鳴ったりガタつきを感じる場合は消耗部品がすり減っている可能性があります。

弦の経年劣化が原因で、音が悪くなる場合があります。
特に低音部の弦では、経年劣化により音の伸びが悪くなったり、ジーンという雑音が混ざるような状態になることがあります。1音1音鳴らして音の詰まりや雑音がないか確かめましょう。

内部

ピアノの状態を確認するには内部のチェックが欠かせません。ここでは特に確認してほしい部分をご紹介します。

ひとつは、ピアノで一番多い修理箇所でもある「フレンジコード」というハンマー等の動きを補助する部品です。
経年劣化により切れて茶色く変色していたらもうすぐ切れてしまうため、近いうちに修理が必要です。

もうひとつはハンマーフェルトです。
こちらも経年劣化が分かりやすい部分です。弦に接する部分に深く溝がついていたり、弦の錆びがついている場合は音も固くなってしまっており、修理が必要です。

「内部の状態を教えてほしい」と申し出れば、信頼できる店舗の場合は見せてくれるはずです。気になったピアノがあれば必ず内部を見せてもらいましょう。また、見た目のきれいさも重要です。金属部品の強い錆びやカビの痕などがあるピアノは避けるのがベターです。

まとめ

中古ピアノ選びにおいて大切なのは、見た目や安さだけでなくピアノの状態を十分に理解した上で購入することです。そのためには信頼できる店舗で十分な説明を受けることが大切。
これから中古ピアノを購入する方はぜひ、ご紹介した失敗談も参考に、納得する自分だけの1台を見つけてくださいね。