前回は、市民オーケストラの活動に必要なお金やモノのお話をしました。さて、市民オーケストラの活動を長く続けていると、他のオーケストラから「エキストラとして出演して欲しい」というオファーが来ることがあります。
市民オーケストラの演奏会に出演するのは、団員だけとは限りません。正規の団員ではない人を外部から招いて演奏会に参加してもらうことがあります。このような外部の人を「エキストラ」略して「トラ」と呼びます。
エキストラって練習には毎回参加するの?謝礼はいくらくらいもらえるの?遠方の場合に交通費は出るの?エキストラを引き受ける前に気になることがたくさんありますね。
この記事では、そもそもエキストラとしてオーケストラに参加するにはどうしたらいいのか、謝礼や交通費は出るのか、エキストラを引き受けることになったらどのようなことに気をつければいいのか、など、エキストラに関するあれこれをご説明します。
目次
◼エキストラが必要とされるとき
エキストラが必要とされるのはどのような場合でしょうか。おおまかに分けて2つあります。
1. 特殊楽器が必要なとき
オーケストラの楽曲のなかには、通常の編成には含まれない楽器を使用する曲があります。このような楽器を総称して「特殊楽器」と呼びます。
特殊楽器の一例を挙げると、ハープ、ピアノやチェレスタなど鍵盤楽器、サックスやユーフォニウム、ドラムなど一部の管楽器や打楽器です。
このような楽器は演奏方法も特殊なので、専門の奏者が演奏することが一般的です。しかし、出番が必要な楽曲がそれほど多くないので、ときには数年に一度しか乗り番がないということもあります。そのため、正規の団員として市民オーケストラに 所属している奏者はあまりいません。
そのような理由から、特殊楽器が必要な楽曲をプログラムに入れる場合、外部から奏者を招いて演奏してもらうのです。
2.正規の団員だけでは人数が足りないパートがあるとき
市民オーケストラの団員は、楽器が好きな人が有志で集まり成り立っています。しかし、ときには仕事や家庭の事情などで休団や退団を余儀なくされることもありますよね。
いろいろな理由で団員がいなくなったとき、そのパートにすぐ新しい人が入ればいいのですが、そうもいかずにずっと欠員状態が続くこともあります。
その他にも、たとえばマーラーやブルックナーの交響曲のように大規模な編成の楽曲を演奏するときには団員だけで人数が足りないということもありえます。
このような事情で、人数が足りないパートの助っ人としてエキストラにオファーをするのです。
◼エキストラってどうやったらなれるの?
さて、もしあなたが、どこかの市民オーケストラに入って「エキストラとして演奏したい!」と思ったとき、どのように求人を探せばいいでしょう。エキストラを募集しているオーケストラを見つけるための方法を挙げてみましょう。
1. 団員に紹介してもらう
「エキストラをやってみたい」と思ってあちこちの市民オーケストラのサイトを調べても、エキストラの募集が出ているところはほとんど見つからないと思います。
ここでエキストラを依頼する側の立場になって考えてみましょう。エキストラとは、練習初日から演奏会まで、短くて数ヶ月、長ければ1年近くのお付き合いとなります。そのため、エキストラは演奏の腕前がどの程度なのかはもちろん、オーケストラとの相性も大切になります。「とりあえず人数を揃えたいから、誰でもいいから来て欲しい」なんて軽い気持ちでお願いすることはできません。
そのため、団員からの紹介というパターンが一般的です。まずはどこかの市民オーケストラに所属して、そこで活動しているうちに他の団員からエキストラのお話を受けるというのが一番の近道です。
2. SNSで探す
オーケストラのサイトでエキストラを募集していない場合でも、SNSで募集をしているケースがたまにあります。
最近では、市民オーケストラがSNSのアカウントを持っていることも多く、主に演奏会の案内や練習風景などを発信しています。そのようなオーケストラはSNSを使ってエキストラを募集している団体もあるので、エキストラをやってみたいと思ったら、リプライやメッセージなどで自分の希望を伝えるといいでしょう。
◼エキストラって謝礼や交通費は出るの?
エキストラを引き受けるに当たって気になることのひとつが、謝礼や交通費といったお金にかかわることだと思います。
まず謝礼について。これは出るパターンと出ないパターンがあるのです。
演奏会のプログラムを見ると、団員名簿が載っていますね。名前の後ろに「団友」と書かれている場合、その人は謝礼をもらっていないエキストラ(「タダトラ」と呼びます)です。
謝礼をもらっていないエキストラというのは、たいていが団員の家族や友人など、団員と近しい人です。親しい人づての市民オーケストラにエキストラ出演するときは、謝礼の有無を最初に確認しましょう。
謝礼が出る場合、金額は数千円〜1万円ほどです。ハープなど、一部の楽器はプロやセミプロの奏者をエキストラで呼ぶことがあります。その場合はもう少し高額になります。
ちなみに交通費は、謝礼に含まれることがほとんどです。また、謝礼が出ない場合でも打ち上げの会費は免除というパターンも。
◼「ダメトラ」なんて言わせない!エキストラを引き受けたときの心得
エキストラに来てもらったものの、期待外れの人をダメなエキストラ、略して「ダメトラ」と呼びます。せっかくエキストラを引き受けるなら「ダメトラ」なんて呼ばれたくないですよね。「あの人にお願いしてよかった」と思ってもらえるようなエキストラの心得を紹介しましょう。
・練習にはなるべく参加すること
エキストラを引き受けたら、まずは練習日の予定を確認しましょう。そして、参加できる日にはなるべく参加するようにしましょう。
練習に参加するときは、指揮者や他の団員の指示に従い、挨拶や礼儀を忘れず行動しましょう。また、当日の欠席や遅刻は事前に連絡します。これは自分が所属するオーケストラの練習と同じですね。
やむを得ず、演奏会本番までほとんど練習に参加できない場合は、指揮者の指示やボウイング(弦楽器の場合)をよく確認しましょう。楽譜をもらった時点の指示と大幅に変わっていることがあるからです。
・演奏会当日は忘れ物に注意
エキストラは、演奏会が終わるとそのオーケストラの団員と会う機会がほとんどありません。そのため、演奏会当日は忘れ物をしないように注意しましょう。
演奏会が終わった直後は、着替えや舞台の後片付けと、とにかくバタバタしているので、忘れ物をしやすくなります。特に鉛筆や髪飾り、アクセサリーといった小さなもの、当日にお客さんからプレゼントされる花束や差し入れはえてして忘れてしまいやすいので要注意。
打ち上げに参加せずに帰る場合、団員はエキストラに忘れ物を届けることができません。連絡先を知っていれば後日郵送することもできなくはないですが、それも手間がかかります。花束など日持ちのしないものは結局処分せざるを得ないため、団員にご迷惑をかけてしまうことになります。
・自分が所属するオーケストラに迷惑をかけないこと
エキストラを引き受けるうえで一番大切なことですが、自分が所属しているオーケストラの活動と両立できるかどうかをよく考えましょう。
エキストラを引き受けたからといって、自分が所属するオーケストラの曲が練習できない、となっては本末転倒です。エキストラは、自分のオーケストラの曲をきちんと練習して、さらに余力があるときに引き受けるのがベストです。
◼まとめ
いかがでしたでしょうか。
他のオーケストラにエキストラ出演することは、普段と勝手が違うことも多く、なんだか大変そうと思うこともあるかもしれません。
とはいえ、エキストラを経験することで、自分の所属するオーケストラではできないような曲を演奏したり、普段と異なる指揮者やオーケストラのメンバーと一緒に演奏することができます。
自分のオーケストラの曲の練習との両立も楽ではないかもしれませんが、エキストラには謝礼以上に大きな学びと喜びがあります。機会があれば、エキストラを引き受けてみるのも良いのではないでしょうか。