クラシックは大好きだけど、アマチュアのオーケストラなんて・・・と言っている皆さん、あなたの街に素敵なコンサートホールはありませんか?
ロビーには地元のアマ・オケのチラシもきっとあるはず。一度だまされたと思って足を運んでみませんか?
バブル経済で地方財政にゆとりがあったころ、全国の自治体が「しろうとのど自慢」を誘致できるようにと立派なコンサートホールが競うように建設された時代がありました。
1988年の竹下内閣ふるさと創成1億円バラマキ政策もそれに拍車を掛けたようで、私の街と隣接自治体すべてに練習場も備わった素敵なホールが、車ならわずかな距離にいくつもあり、私たちアマ・オケにはとても恵まれた環境となっています。
イギリス人の演奏仲間からは、「なんでこんなに立派なホールが沢山あるの?英国の田舎には教会しかないよ!」と、羨ましがられた、というより、半ば呆れられています。
文化予算がどんどん切り捨てられていく時代になってしまい、もう少し1億円の使途を真剣に考えてほしかったとも思いますが、今となっては、地域のホールがフル活用されているなら、まあ良しとしましょう。
さて、クラシック・ファンのあなたなら、フィンランドの大作曲家シベリウスの音楽はご存じですよね。
第2のフィンランド国歌と言われる「フィンランディア」は歌詞をつけて合唱団で歌われ、軽快なカレリア行進曲もお馴染みだと思います。
英国では、ことのほかシベリウスが人気だそうで、日本にも熱狂的なシベリウスのファンが多く、東京にはシベリウス専門のアマ・オケもあるほどです。
合唱付きのクレルヴォ交響曲も入れて8曲の交響曲、バイオリン協奏曲など、フィンランドの歴史、自然の厳しさと素晴らしさを音楽にしたような独自の世界が人々を魅了しています。
しかしながら、国内のプロ・オケの演奏会で取り上げられるのはもっぱら交響曲第2番。他の交響曲を生で聴く機会は滅多にないようです。
そういえば、ロシアの大作曲家ショスタコービッチも15曲もの交響曲を残していますが、第5番以外はほとんど生で聞く機会がありません。
チケットが売れるのは、シベリウスは2番、ショスタコービッチなら5番。べートベン「運命」交響曲のように、苦悩を乗り超えて高らかな勝利へと感動を誘う作品がダントツの人気を誇り、他の交響曲にチャレンジしようとする指揮者も少ないからなのかも知れませんね。
あなたの街のアマチュア・オーケストラも、きっとこの2曲は大事なレパートリーのはず。
とりわけシベリウスは、ショスタコービッチ第5番に必要なピアノ、チェレスタ、2本のハープなどは不用なので、エキストラ確保や資金難を心配しなくてもよいこともあって、定番中の定番となっています。
難をいえば「運命」や「革命」といったニックネームがないので、クラシックにあまり馴染みのないお客様にも来ていただけるようPRしていくのが大変なのですが、一度聞いていただければ誰もが好きになること、請け合いの名曲です。
https://youtu.be/SAOf46CXaaw
ところが、聞くのと演奏するのとは大違い。自然な流れが心地よく、素朴で力強い音楽に聞こえるのですが、実は複雑かつ頻繁にリズムも調性も入れ替わり、臨時記号もとても多い難曲です。
早くて小刻みなパッセージを、それも小節の頭からではなく、途中からはじめる箇所が多いのがシベリウス風ともいえるのですが、独特のリズム感覚を全員で共有できるかがまず難題。
中でも第2楽章のややこしいリズムを何とかクリアーできても、3楽章で弦楽器に要求される超スピードのフィンガリングには練習が始まるやいなやギブ・アップの声が聞こえてきます。
それでも2番はまだまだ簡単なのだそうで、シベリウスは絶対にいや!と公言するバイオリン仲間がいるのも頷けます。それでも、じっくり時間をかけて練習できるのがアマ・オケの強み。
第3楽章が風のささやきのような軽やかな音楽になるまで、一人ひとりが、メトロノームを1目盛りづつ根気よく上げながら超ハイスピードのフィンガリングに挑戦して、全員がマスターできれば、そこに幸せが待っている!・・・というわけですが、最大の難関は和声。
一人でじっくりと練習し、CDとあわせてもダメで、経験豊かなプロの耳で厳しいチェックをもらいながらの合奏練習の中で身につけないと本当の響きは生まれてこないようです。
それだけ奥が深く、皆でチャレンジしたくなる名曲とも言えるかもしれませんね。
プロ・オケと違ってアマチュアの集まりなので一人ひとりの技量も経験もやりたい曲も全くばらばら。そんな集団ですが、力を合わせて古今の名曲を演奏できる喜びは格別。強い絆が生まれます。
経験豊かなプロ・オケなら2~3回、ときには1回の練習で仕上げなければいけないこともあるところを、アマ・オケならば何ヶ月も、ときには1年かけて練習を重ねていけるのですから、完璧ではなくとも、優れた指揮者のバトンさえあれば、プロにも負けないような素晴らしい感動の演奏会も聞ける・・・こともあるのですよ!
筆者の所属する南大阪管弦楽団、第30回記念定期演奏会。
7月2日(日)14時開演(13時半開場)、大阪府富田林市のすばるホールで、メイン・プログラムは、もちろんシベリウス第2交響曲。若きマエストロ、上田真紀郎さんの驚異のバトンからの名演奏をご期待ください。
で、なんと入場無料!ご家族、一族郎党を引き連れての鑑賞も懐は痛みません。皆様お誘い合わせで是非お運びください。