「クラシック音楽が胎教に効果がある」とはよく聞きますが、実際のところどうなのでしょうか。
お腹にいる大切なわが子のために何かしてあげたい、というのは誰もが願う気持ちです。効果があるのなら、手軽なことから実践してみたいですよね。
本記事では、クラシック音楽と胎教の関係について詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
案内人
- 山吹あや幼少期からピアノ、中学校からサックス、高校から声楽を始め、地方国立大学教育学部音楽専攻へ進学。卒業後、小中学校の教員として11年間勤務。中学校では合唱部顧問を担当し、県大会を通過し関東大会に多数の出場経験がある。
目次
胎教とは?
そもそも胎教とは、広い意味でいうと「胎児にいい影響を与えること」を指します。
「胎教」の漢字に着目すると「胎内での教育」といったイメージを持つ人が多いでしょう。たしかに以前は、このようなイメージが広く浸透していました。
しかし現在では、教育のような少々堅い考え方ではなく、もっと広く砕けた意味合いで使われる言葉になっているのです。
胎教にクラシック音楽が効果的?
「クラシック音楽が胎教に効果がある」「とくにモーツァルトの楽曲は胎児の生育に良い」というのは、以前からよく言われていることです。
しかし実際のところ、それらに科学的な根拠はないとされています。クラシック音楽が直接お腹の赤ちゃんの発育に影響を与える…というわけではないのです。
とはいえ、効果がないというのもまた違います。
妊娠中の女性は心身ともに負担が重く、ストレスを抱えやすい状態です。これが続くと、早産や低出生体重児などのリスクが増え、母体も胎児も悪影響を被ることがわかっています。
つまり『できるだけストレスを受けない環境で、リラックスして過ごせば、胎児にも良い影響を与えられる』というわけです。そこで注目されたのがクラシック音楽のリラックス効果。
クラシック音楽といってもさまざまな曲調の音楽がありますが、とくにモーツァルトの楽曲にはリラックス効果があるとされています。具体的には、自律神経のバランスを整える効果や、1/fゆらぎ(川の流れる音やそよ風のような自然音に含まれる音のゆらぎ)による気持ちを落ち着かせる効果です。
もちろんモーツァルト以外の音楽家の楽曲にもリラックス効果はあります。リラックスすることで母体のストレスが軽減されるという大きなメリットを得られるため、そういった意味でクラシック音楽を聴くのは胎教に効果的であると言えます。
胎教におすすめのクラシック音楽~モーツァルト~
モーツァルトの楽曲にはリラックス効果があるとされ、胎教以外にも仕事や勉強中、就寝前のBGMなど、さまざまな場面で用いられています。
ここでは演奏形態の異なる3曲を紹介します。
【モーツァルト】ホルン協奏曲第1番ニ長調第1楽章
ホルンと管弦楽の編成による、多彩な音色と美しい旋律が特徴的な曲です。
アンサンブルから生まれる美しく温かい中音域の響きが心を落ち着かせてくれます。爽やかな旋律が程よいテンポ感とともに生き生きと流れるため、元気の出ない朝に聴くのがおすすめです。
【モーツァルト】2台のピアノのためのソナタニ長調
2台のピアノで演奏され、流れるような細やかな旋律と軽快さが特徴的な曲です。
2人の奏者の掛け合いが心地よく、またピアノが2台あることで生まれる安定感も、他にはない魅力と言えます。やや速めのテンポ感なので、家事をするときや外出前などに聴くのがおすすめです。
【モーツァルト】セレナーデ第13番ト長調アイネ・クライネ・ナハトムジーク第2楽章
弦楽合奏で演奏される楽曲です。ゆったりとしたテンポと、弦楽合奏の厚みのあるサウンドが心を落ち着かせてくれます。
セレナーデとは日本語で「夜曲」や「小夜曲」と訳されます。穏やかで美しい旋律と安定感のある響きが魅力なので、リラックスして眠りにつきたい夜におすすめです。
胎教におすすめのクラシック音楽~ショパン~
ショパンは「ピアノの詩人」とも呼ばれるほど、美しいピアノ曲を多数残しています。ここでは心が落ち着く美しい旋律が魅力的なピアノ曲を3曲紹介します。
【ショパン】ノクターン第2番変ホ長調
ノクターンは「夜想曲」と訳され、ショパンはこれを21曲も作りました。中でも本曲はとくに広く知られており、甘く美しい旋律が多くの人々に愛されています。ゆったりとしたテンポの中で響く、連続した左手の和音が安心感をもたらしてくれます。
夜想曲という名の通り、落ち着いて過ごしたい夜におすすめです。
【ショパン】24の前奏曲Op.28-15「雨だれの前奏曲」
ショパンの代表的な前奏曲。右手の旋律で雨だれの様子を描写している、絵画のような曲です。清らかな旋律と陰を感じる旋律が対照的に現れますが、日々の生活の中でしとしとと降る雨音を心地よく感じるように、どちらの旋律も不思議と心を落ち着かせてくれます。
雨の日にゆったりとした気分で聴くのがおすすめです。
【ショパン】エチュードOp.25-1「エオリアンハープ」
速めのテンポ感と流れるような分散和音が心地いい曲です。ショパン自身がこの曲に関して「牧童が笛で美しい旋律を吹いている」と語っており、その美しさにシューマンは「この曲はエチュード(練習曲)というよりは詩である」と言ったとされています。
明るく快活な気持ちになりたいときに聴くのがおすすめです。
胎教におすすめのクラシック音楽~ほかの有名音楽家~
モーツァルトやショパン以外の音楽家の楽曲にも、リラックス効果が期待できる作品はたくさんあります。ここではチャイコフスキー、サン=サーンス、ドビュッシー、ラフマニノフの楽曲を紹介します。
【チャイコフスキー】バレエ「くるみ割り人形」より”花のワルツ”
バレエ「くるみ割り人形」の第2幕に登場する楽曲です。オーケストラの編成で演奏され、華やかさや暖かさのあるサウンドは心を落ち着かせてくれます。3拍子のワルツのリズムも心地よさのポイントです。
華やかな気持ちになりたいときに聴いてみてください。
【サン=サーンス】「動物の謝肉祭」より”白鳥”
チェロとピアノで演奏される楽曲です。愁いを帯びた美しいチェロの旋律と、揺れる湖面を表すピアノが一つになって優雅に響きます。静かに泳ぐ白鳥を思い起こし、疲れを癒せる優しいサウンドです。
落ち着いた気持ちになりたいときにおすすめの曲です。
【ドビュッシー】「ベルガマスク組曲」より”月の光”
ドビュッシーの楽曲の中でも有名なピアノ曲です。ゆったりとしたテンポの中に流れるような連符と透明感のある旋律が特徴的で、きれいな月夜を思わせてくれます。どこか浮遊感のある幻想的な世界観も魅力です。
美しい月の光を思い浮かべながら、静かな夜に聴くのがおすすめです。
【ラフマニノフ】パガニーニの主題による狂詩曲第18変奏
ピアノとオーケストラで演奏される楽曲です。叙情的で美しい旋律がピアノからオーケストラへ受け継がれ、清らかで壮大な響きが広るように曲が展開していきます。
疲れを癒すような優しいサウンドの曲なので、1日の終わりに聴くのがおすすめです。
自分のペースが大事
クラシック音楽を聴くことは、あくまでもリラックスすることが目的です。「必ず何か音楽を聴かなくては」と神経質になってしまっては逆効果なので、無理のない範囲で取り入れてみてください。
自分のお気に入りの音楽を見つけたり、その日の体調や気分に合わせて曲を選んだり、自分なりの楽しみ方でリラックスした時間を過ごしてくださいね。